年に一度くらい、どうしようもなく、自分のピアノに自信がもてなくなって、もがく時期がくる。人生プラスもマイナスも同じだけあるのだろうけれど、思いつめた私は、「自信 」について考察してみることにした。自信って、字のごとく、自分を信じることから生まれるのだろうか。私の場合、仕事に真っ向から向き合って、とことんやり切った!と思えて初めて自信を持てる。でも、やっと得た自信はあっという間に消え失せる。あの演目は完璧にやりきったはずなのに、またも迷宮に迷い込んで道を見失う。その繰り返し。何年たっても、この点において成長していないように思う私は、自分を信じることにも向き合ってみるべきなのかも。
ウィーンに来たばかりの頃、初めてオケピに入ることが決まって、その演目に小さなピアノソロがあることを気に病んだ私は、一ヶ月以上前からドキドキしていた。オケ奏者にそんな話をしたら、「大丈夫だよ。平気なフリをするのも大事だよ。周りを不安にさせないことも仕事のうちなんだよね 」と笑顔で言ってもらった。これ即ち、同じ土俵で演奏している限り、自分に自信を持つということは、義務であり、相手への礼儀なのかもしれない。自信がないということは、私は中途半端です、というプレゼンテーションをしているようなものだから、真剣勝負している周りの人に失礼だ。
今まで、自信を持たずに本番で演奏したことはない気がするけれど、稽古ピアニストたるもの、普段の稽古も本番の一種なのである。私はそのリハで暗中模索のことが多く、我ながら途方に暮れてしまう。バレエの伴奏はアンサンブルでもあるので、その時の空気、互いの調子などが影響することが大いにある。もしかしたら正解はないのかもしれない。だけど、互いに影響しあうからこそ、呼吸や自意識のコントロール、相手へ気持ちを向けるとか、そういうことが大事なのかな。
そんなことを毎日考えているうち、ふと思いあたったのです。自信の有無って、覚悟の問題かもしれないかな、と。本番では生まれる「覚悟 」を、毎日持ち続けて真剣勝負することが大事なのかもしれないな、と。覚悟を決めるってものすごいこと。ふわっと生きていたらできないこと。それを毎日持ち続ける。毎日覚悟を決める人生を生きる、という覚悟を決める。覚悟を決める、険しい道だからこそ、絶景も味わえるのでしょうかね。