夢のようなほんとの話

土曜日のことです。私は仕事で、とあるレストランにピアノを弾きに。
その日は台風が近づいていたので、お客様もまばら。
いつもはお客様の様子を伺いながら、雰囲気を見て演奏するのだけれど、
なんだか気分が良くて、私は自分の世界に入り込んでしまった。
クラシック、自作曲、ジャズ・・・を即興演奏でつなげた30分のステージ。
(毎度のことながら何の構成もない、心の赴くままのアドリブステージ)
弾き終わると、珍しく盛大な拍手が!ふと我に返ってあたりを見回すと、
拍手の主は、少し遠くにお座りの4人の上品そうな外国人のお客様。
深ぶかとお辞儀をして、ピアノを後にしようと思ったら、もっと弾いてくださいと言う。
しかも、リクエストはショパンのバルカローレとバラード3番。
おいおい、そんな大曲いきなり弾けないよ!と思いつつもピアノに向かってしまうお調子者の私。えっと、何調だっけ?と思いながら(爆)、おそるおそる弾き始める。ところどころ忘れてしまっているのでアレンジでごまかす(笑
弾き終わると、初老の男性が二人、私に近づいてきました。
「Can you speak English?」
英語喋るのも5年ぶりくらいだよ・・・。
貧しい英語力を駆使して会話したら、驚愕の事実が!!!
「貴女のピアノ、素晴らしかったです。我々も音楽家なのです。
私はバイエルン国立歌劇場総裁のサー・ピーター・ジョナスといいます。
こちらは指揮者のズービン・メータです」
えぇぇぇぇっっ!!!今来日公演中のミュンヘンオペラ!!
その頂点に立っておられるお二人!!!!
腰を抜かして口を聞けないでいると、名刺と公演プログラムを手渡してくれた。
そして「You must come our opera!」と繰り返す。
must?来い?命令形?(笑)さすが大物は違う。
「実は私もコレペティ(オペラのリハーサルピアニスト)をやっています」と言うと、
深く頷くお二人。
「分かります。貴女のピアノはきちんとクラシカルトレーニングされているピアノだ。どこのコレペティを?」と聞かれ、どこも専属ではないので困ったあげく、苦し紛れに新国立劇場だというと(それはバレエだけどぉ)大喜びされる。
…しかしこの語学力のもどかしいことよ。
ということで、ヘンデルのオペラ「アリオダンテ」(日本初演)にご招待して頂くことになりました。
公演当日、バックステージの彼らを訪ねることを約束。
まさか、こんなところでこんな夢のような出会いがあるとはね。
オペラの仕事から遠ざかっていることに、焦りを覚えていた時だけに!
10月の公演と彼らとの再会が待ち遠しいです(単なるナンパではないことを祈りつつ 笑)。
それまでに、付け焼刃の語学力を身につけておかなくては!!
バイエルン国立歌劇場日本公演
http://www.nbs.or.jp/stages/bayerische/