東京。過去、現在、未来。

実はこの5月、日本に二週間弱、帰国していました。
ウィーン国立歌劇場のシーズンは、9月~6月末なので、
本来、この季節に休みはない筈なのですが、
今年は7月に1ヶ月のパリ公演があるので、その振替バカンスを頂いたのです。
実家の大阪、長年暮らした東京、その両方を短い時間ながらも満喫してきました。
思い出を少し、こちらに残しておこうと思います。
まずは東京。
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東京へ向かう機内で。やっぱり富士山は美しい。
東京に着き、最初に向かった場所は熱海。仲良しの友達と温泉に。
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星野や系列のこの宿、とても素敵だったので、また別途ご紹介したいと思います。
私が音大を卒業してすぐに勤めた、横浜のバレエスタジオで一緒に働いていたダンサーのあやちゃんと、横浜港を見渡すイタリアンでランチ。
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バレエピアノについて右も左も分からない頃から育てて頂いたスタジオで、
踊りにも教えにも情熱を傾けていて、才気溢れる彼女。
同僚としても心の近い友人としても大切な人。
この日はほんのわずかな時間だったのに、笑い過ぎてお互い若干喉が痛かったね(笑)
その後、音大時代の同級生との待ち合わせで、仙川へ。
母校のある仙川は、7年間住んでいた懐かしい街。
桐朋生が通いつめるお店アンカーヒアで、懐かしの唐揚げを食べ、
母校の門前で記念撮影。ここで写真撮ったのは卒業式以来。
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そして、大野雄二ライブを聴きに、柴崎のジャズ喫茶さくらんぼへ。
ご存知、ルパンシリーズの作曲家、大野さんのライブを聴くのは今回初めて。
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大野さんは70歳過ぎという年齢が信じられないほど、芯のあるクリアな音色で。
カルテット全員実力派揃いだし、ルパンは今聴いても新しい。
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(私の左が大野さん)
さくらんぼも当時の私たちのお気に入りのお店で、昼夜問わず通っていました。
マスターがジャズのレコードをかけて、これと同じように弾いてごらん、とお店のピアノを弾かせてもらってたり。今思えば、音楽の素敵なところをたくさん教えてもらっていた、音大の課外授業だった。
マスターも久々の再会と私の現在を喜んでくれました。
その日は友人とニューオータニに泊まり、遅くまでお喋り。
学生時代、紀尾井ホールでアルバイトしていたから、紀尾井ホールの向かいにあるニューオータニはやっぱり懐かしい場所。
翌日はニューオータニ美術館にも足を運びました。
日本美人画特別展をやっていたので、外国人の同僚にお土産を数点購入。
そして、インターネットラジオottavaのスタジオにお邪魔しに、赤坂のTBSへ。
初めてお会いするプレゼンター斎藤茂さん、お声の印象そのままのあたたかい方でした。
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斎藤さんに素敵な企画を頂き、今後ottavaとはご縁が深くなりそうです。
また改めてご紹介しますね!
その日は、そのottavaを紹介してくれた友人宅にお泊まり。
友人には中2と小5のお嬢ちゃんがいて、私は3人に会うことを毎回とても楽しみにしているのです。
大好きな親戚のような3人。
小5の2号ちゃんはイラストがとても上手。彼女の作った切手がとても可愛くて。
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ああ可愛い。
次の日は自由が丘にて、BalletJaponさんの取材を受けました。
6月初めにインタビュー記事がネットと冊子で公開されるそうなので、また詳細をお知らせしますね。
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その後、少し時間があったので、買い物をしに渋谷へ。
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相変わらずの渋谷の雑踏。
ウィーンでは買えない、日本のセレクトショップでオシャレなもの色々買いたいと思っていたはずが、
向かった先は、バレエ用品店チャコット。
こんな貴重な時間にもバレエDVDとCDをチェックしている私は、バレエバカなんだと思います…。
フライトまでの時間、同じくバレエを生業としている友人と晩ご飯。
築地で美味しいお寿司を頂きました。
近くには新しい歌舞伎座が。
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のんびりお寿司をつついているうちにフライトの時間が迫ってきて、
築地から羽田までタクシーで向かったのですが、
高速から眺める東京の夜景が懐かしくてキュンときて。
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この東京でたくさんの人や仕事に出逢って、生かされてきたんだよね。
東京でこの先も生きていくのはつらい、そんな思いも大きくなり、気持ちがヨーロッパに向かっていったけど、東京は思い出のたくさんつまった大事な街だし、留まらず流れていて、常に変化していく街でもある、と感じました。現に、この2泊の短い東京滞在で、図らずも、新しい方々と出逢って、刺激と未来へ繋がる何かを頂くことができたのだから!
東京は、帰る場所。たくさんの友人がいる場所。
そして、新しい何かをその都度もらえる場所。
東京という街が持つ、その懐の深さ、大きなエネルギーを、
味わって循環させることができる自分でいたいと思うのです。
受け取る一方でなく、還元できる人間であり続けたいなと。
改めて感じさせてくれた、2013年初夏の東京に、ありがとう。またね。

ベオグラード公演と豊かさについて

先月、ウィーン国立バレエ団は、セルビアの首都ベオグラードにて公演してきました。
ベオグラードダンスフェスティバルへの客演です。
中欧から距離こそ近いものの、旧ユーゴスラビアは異文化、、遠く感じます。
ウィーンからベオグラードは飛行機で2時間弱。
機内誌には、わがカンパニーの星、木本君の写真。

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ホテルからの眺め。

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公演会場サバセンター(日本の国際展示場みたいな感じかな)にて、

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公演も大盛況でした。

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うちのカンパニーのセルビア人ダンサー二名もそうですが、
セルビア人は背が高くて美男美女が多いという印象。
初日のディナーに、連れていって頂いたレストラン。

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公演前のランチ。肉大盛!
踊る前にみんなで体力をつける(笑)

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今回は二泊三日の弾丸ツアーでしたが、
最終日、二時ごろまでフリーだったので、私はホテルのプールでひと泳ぎしてから、街へ繰り出してみることに。
サバ川ほとりの旧市街。

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セルビアは南スラブ民族なので、文字はキリル文字。

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スラブ系のダンサー達は、皆ロシア語で現地の方とやり取りしていました。

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物価はそれほど安くなく、ショッピングセンターに行ってみると、ウィーンより高く感じるほど。
外国人向けなのでしょうか…。
ひとつ、おもしろいことに気づきました。
セルビアでのお店での支払いがかなりおおらかなのです。
たとえば、スーパーに行ってお水を買ったとします。
100円だったとして、私が細かいお金は70円しか持っていなくて、
あとは500円玉しか持っていなかったとします。
すると、70円でいいよ!と、まさかの切り捨て。
このレジの方が特別かと思いきや、アイスクリーム屋さんでも空港の売店でも、どこでもそうだったので、そういう文化なのでしょう。ウィーンでは大抵、チップとして多めに支払うし、日本では1円単位まできっちり計算するし、、支払いへの価値観もほんとにそれぞれですね。
このような建物も旧市街の至るところに。

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美しい教会。

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ふと一人我に返り、セルビアでこうして仕事をしていることの不思議をかみしめたり。

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ピアノという翼を与えてくれた両親、今まで出会った方々がここまで連れてきてくれたのだろうな。ありがとう。
そして、旅の最後にハプニングが。
ウィーンゆきの飛行機が強風のため遅延して、ベオグラードの空港で足止め。。
ダンサーたちは次の日も、ウィーンで「真夏の夜の夢」公演があるので、ヤキモキ。
結局、空港で七時間も待ち、ウィーンの家に戻ったのは深夜12時を回っていました。
疲れたけど、普段あまり話せないダンサーたちとたくさん恋バナしたりバカ話したり飲んだり。

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こんな時間もきっと旅の醍醐味であり、ギフトだと思いました。
最近、よく思うのです。
「この瞬間を忘れないでいたい。ずっと覚えていたい」って。
だけど、きっと記憶ってポロポロこぼれ落ちていって、いつか忘れてしまう。
ひとつひとつを永遠に覚えておくことはできないかもしれないけど、
いつか忘れてしまうかもしれないけど、
豊かな何か、は残っていき、蓄積されていくものなのかもしれない。
記憶が昇華された後に残る豊かさ、こそが宝なのかもしれない。
今回の旅も、日々の小さなことも、豊かに残っていきますように。