モーツァルトピアノ協奏曲を弾く

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私が幼い頃から一番好きだったピアノ協奏曲が、世にも美しいバレエ作品になり。客席で何度も観た作品。その作品を演奏する幸を頂きました。今夜、国立歌劇場のヌレエフガラで、マニュエル・ルグリとイザベル・ゲランが踊る「ルパルク」を弾きます。5月の最初に、監督にこのお話を頂いて、以来、ル・パルクを弾くということが、小さな宝石のように私の心の中に在りました。

モーツァルトがこの曲を作曲したウィーンで、このオーケストラで、モーツァルトを弾けるなんて、ミラクルのような出来事だと思っています。ボスの踊る舞台で弾くのも初めてです。

モーツァルトのアダージョは、一音一音、嘘がつけない。カッコつけることもできない。ただ、この少ない音数、美しいメロディと和声に、素の自分、裸の自分が表れてしまう。何かを表現しようとして計算するのではなく、そぎ落とす。シンプルで正直な心の機微、音色を表現する。そんな演奏ができたら、と思います。

それでは、いってまいります。

 

 

覚悟を決めるということ

年に一度くらい、どうしようもなく、自分のピアノに自信がもてなくなって、もがく時期がくる。人生プラスもマイナスも同じだけあるのだろうけれど、思いつめた私は、「自信 」について考察してみることにした。自信って、字のごとく、自分を信じることから生まれるのだろうか。私の場合、仕事に真っ向から向き合って、とことんやり切った!と思えて初めて自信を持てる。でも、やっと得た自信はあっという間に消え失せる。あの演目は完璧にやりきったはずなのに、またも迷宮に迷い込んで道を見失う。その繰り返し。何年たっても、この点において成長していないように思う私は、自分を信じることにも向き合ってみるべきなのかも。

ウィーンに来たばかりの頃、初めてオケピに入ることが決まって、その演目に小さなピアノソロがあることを気に病んだ私は、一ヶ月以上前からドキドキしていた。オケ奏者にそんな話をしたら、「大丈夫だよ。平気なフリをするのも大事だよ。周りを不安にさせないことも仕事のうちなんだよね 」と笑顔で言ってもらった。これ即ち、同じ土俵で演奏している限り、自分に自信を持つということは、義務であり、相手への礼儀なのかもしれない。自信がないということは、私は中途半端です、というプレゼンテーションをしているようなものだから、真剣勝負している周りの人に失礼だ。

今まで、自信を持たずに本番で演奏したことはない気がするけれど、稽古ピアニストたるもの、普段の稽古も本番の一種なのである。私はそのリハで暗中模索のことが多く、我ながら途方に暮れてしまう。バレエの伴奏はアンサンブルでもあるので、その時の空気、互いの調子などが影響することが大いにある。もしかしたら正解はないのかもしれない。だけど、互いに影響しあうからこそ、呼吸や自意識のコントロール、相手へ気持ちを向けるとか、そういうことが大事なのかな。

そんなことを毎日考えているうち、ふと思いあたったのです。自信の有無って、覚悟の問題かもしれないかな、と。本番では生まれる「覚悟 」を、毎日持ち続けて真剣勝負することが大事なのかもしれないな、と。覚悟を決めるってものすごいこと。ふわっと生きていたらできないこと。それを毎日持ち続ける。毎日覚悟を決める人生を生きる、という覚悟を決める。覚悟を決める、険しい道だからこそ、絶景も味わえるのでしょうかね。

 

 

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ウィーン&ベルリン室内楽シリーズに出演します

今年の夏、愛知県の豊田市コンサートホールにおいて、室内楽の演奏会に出演させて頂くことになりました。共演するのは、ウィーンフィルホルン奏者のヴォルフガング・トムベックさんと、若きヴァイオリニストの郷古廉さんです。

ウィーン&ベルリン第1回

こちらは、ウィーン&ベルリン室内楽シリーズという演奏会の第一回公演だそうです。そうそうたる顔ぶれが並んでいて、ドキドキします。

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ホルンのトムベックさんは、長きに渡り、ウィーンフィルのエースとしてご活躍してこられた方ですが、私がウィーンの劇場に勤めて初めてオケピに入って弾いた「眠れる森の美女」公演初日、隣の席で彼が演奏していらっしゃったのです。演奏前に「こんにちは。新人さんかな?」と話しかけてくださって、「実はオケでピアノ弾くの今日が初めてなんです」と言うと、「ウィーンフィルが初オケだなんて凄いね!楽しんでね」とにっこりしてくださいました。本番前、自分の心臓の鼓動で椅子が揺れるくらい緊張していたのですが、彼が隣にいてくださったお陰で、随分心強く思ったことを覚えています。以来、お隣さんで演奏することが多く、その都度、ピアノを褒めてくださり、自信をなくしがちな私をいつも勇気づけてくれる方でした。ベテランの彼の音楽は本当に素晴らしく、また、信頼感、安心感を抱ける音楽家で、今まで彼の隣で演奏してきて、どれだけの糧を頂いてきたことでしょう。

そんな彼が日本でコンサートを開くことになり、共演者に私を指名してくださったことは、本当に嬉しいお話でした。普段、いわゆる「室内楽」を弾き慣れていない異端の私ですが、このところ毎日のように稽古して、その真髄に迫るべく大切に日々を過ごしています。早起きが苦手な私が朝練も始めました!初朝練!

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ヴァイオリンの郷古さんとは今回が初めましてですが、若くして既に大器の貫禄、素晴らしい才能の持ち主だと思います。お二人とも、なんといっても音がとても美しくて、一緒に演奏していてこれ以上の幸せはないかな、という気持ちになります。

コンサートは、7月5日(日)15:00開演です。関東や関西からでも日帰りできるので、よろしければ、是非、豊田にいらしてくださいね。

公式サイトはこちらです↓

豊田市コンサートホールウィーンベルリン室内楽シリーズ第一回
http://www.t-cn.gr.jp/info/1568/