ホイリゲ日和

ご無沙汰してしまいました。私は元気にしています。二ヶ月のバカンスを終えてウィーンに戻ってきて、私にとって5回目の、オペラ座でのシーズンが開幕しました。書きたいことはたくさん溜まっているのですが、ひとまず、今のウィーンの様子をお伝えしようかな。シーズンが始まったばかりで、まだ少し心に余裕のある私は、「遊べるうちに遊んでおなかいと」と、友人とウィーンの森方面にハイキングにでかけました。

ハイリゲンシュタット駅から歩き始めて、ほどなくするとこんな風景が。

ぶどう畑の向こうにドナウ川が見えてきました。

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ぶどう畑の中を散歩する贅沢さ。気持ちいい風が通り抜けていきます。

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ハイリゲンシュタットから歩くこと一時間、目的地のホイリゲ、Wieninger am Nußbergに。

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こちらは休日しか開いていないホイリゲ。自然に囲まれながら頂く美味しいワイン…最高!

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疲れが一気に吹っ飛びます!焼きたてのプラムのケーキとぶどうジュースも頂きました。

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いい感じに気持ちよくなったところで、二軒めに向かいます。

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また、ぶどう畑のなかをてくてく歩いて

 

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ウィーンの街が一望できます。劇場も私の家も視界のなかに。ああ、なんて気持ちいいんだろう。

 

2軒めはこちらのホイリゲ。Mayer am Nußberg

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私たちが飲んでいるジュースのようなものは、シュトゥルムといって、発酵途中のワイン。オーストリアでは9月になると出回ります。濁っていて甘くて僅かに発泡していて、ぶどうジュースとワインの間のような感じかな。私はウィーンに越してきて初めて知ったのだけど、これが大好きでこの季節がくるのを毎年楽しみにしています。手前のヌスベルククラプフェンも大好き。ここでは、デッキチェアに寝そべって、ぶどう畑の向こうに沈む夕焼けを見ながら、ゆるゆると過ごします。もうね、天国。。

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陽が沈んでからは、三軒目、安定のHeuriger Sirbuへ。

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お料理が美味しいお店で〆。ちゃんと、3軒のシュトゥルムの飲み比べもできました。

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暗くなるまで飲み語って大満足した私たち。帰りはもちろん、来た道を下ります。ぶどう畑の中のホイリゲはどの駅(バス、トラム、地下鉄)からも遠いので、酔っぱらっていても徒歩で下山。街灯もほとんどないぶどう畑は、夜に独りで歩いたらきっととても怖いのだけど、周りもみんな陽気な酔っぱらいで、おかしなテンションで下山していました。もう、こういうところがウィーンらしいよね!

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ドナウ川に渡る橋とその向こうの夜景(国連方面)を眺めつつ、ご機嫌の下山。とっても久しぶりにベートーヴェンの小径も歩きました。

 

この季節にウィーンにいらっしゃる方、市街地も素敵ですが、お時間があったら、是非、ウィーンのぶどう畑のホイリゲにも足をのばしてみてはいかがでしょうか。

 

ウィーン&ベルリン室内楽シリーズに出演します

今年の夏、愛知県の豊田市コンサートホールにおいて、室内楽の演奏会に出演させて頂くことになりました。共演するのは、ウィーンフィルホルン奏者のヴォルフガング・トムベックさんと、若きヴァイオリニストの郷古廉さんです。

ウィーン&ベルリン第1回

こちらは、ウィーン&ベルリン室内楽シリーズという演奏会の第一回公演だそうです。そうそうたる顔ぶれが並んでいて、ドキドキします。

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ホルンのトムベックさんは、長きに渡り、ウィーンフィルのエースとしてご活躍してこられた方ですが、私がウィーンの劇場に勤めて初めてオケピに入って弾いた「眠れる森の美女」公演初日、隣の席で彼が演奏していらっしゃったのです。演奏前に「こんにちは。新人さんかな?」と話しかけてくださって、「実はオケでピアノ弾くの今日が初めてなんです」と言うと、「ウィーンフィルが初オケだなんて凄いね!楽しんでね」とにっこりしてくださいました。本番前、自分の心臓の鼓動で椅子が揺れるくらい緊張していたのですが、彼が隣にいてくださったお陰で、随分心強く思ったことを覚えています。以来、お隣さんで演奏することが多く、その都度、ピアノを褒めてくださり、自信をなくしがちな私をいつも勇気づけてくれる方でした。ベテランの彼の音楽は本当に素晴らしく、また、信頼感、安心感を抱ける音楽家で、今まで彼の隣で演奏してきて、どれだけの糧を頂いてきたことでしょう。

そんな彼が日本でコンサートを開くことになり、共演者に私を指名してくださったことは、本当に嬉しいお話でした。普段、いわゆる「室内楽」を弾き慣れていない異端の私ですが、このところ毎日のように稽古して、その真髄に迫るべく大切に日々を過ごしています。早起きが苦手な私が朝練も始めました!初朝練!

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ヴァイオリンの郷古さんとは今回が初めましてですが、若くして既に大器の貫禄、素晴らしい才能の持ち主だと思います。お二人とも、なんといっても音がとても美しくて、一緒に演奏していてこれ以上の幸せはないかな、という気持ちになります。

コンサートは、7月5日(日)15:00開演です。関東や関西からでも日帰りできるので、よろしければ、是非、豊田にいらしてくださいね。

公式サイトはこちらです↓

豊田市コンサートホールウィーンベルリン室内楽シリーズ第一回
http://www.t-cn.gr.jp/info/1568/

ぶどう畑でのウェディングパーティー

先日、私の友人と劇場の仕事仲間の結婚式に呼んで頂きました。
ウィーンの結婚式は平日昼間、区役所でおこなわれます。お式でピアノを弾くことになっていた私は、仕事を早退して会場へ向かいました。

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ウィーンの区役所婚に参列するのは、私にとってはこれが二度め(一度目は今年春の同性婚!)でした。区役所と言えど、堅苦しい空気はなく、和気あいあいとした柔らかな雰囲気。新郎新婦も私も、式次第が分からぬままお式に突入したので、どのタイミングで何を弾いたらよいのか…ほとんどアドリブの世界笑。こういうのもウィーン気質といってさしつかえないと思います(笑)

つつがなく結婚式は終わり、私たちはそのままウィーンの森へ向かいました。
披露宴会場は、ぶどう畑の中にあるホイリゲ。ウィーンはワインの名産地で、街中から車で20分も走ると、こんなぶどう畑が広がっているところが、私がウィーンを愛している理由のひとつでもあります。

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先週も日本から来てくれた友人とぶどう畑で寝転りながらワインを飲んだばかりなのですが、この日の披露宴会場は、初めて訪れるお店。お店に入った途端、私は驚いてしまいました。実は昔、日本の雑誌(PenだったかなCreaTravellerだったかな)にウィーン特集が組まれていて、一枚のホイリゲの写真に魅了されたのです。ウィーンに住むことになり、ずっとそこに行きたいと願っていたのですが、お店の名前が分からず、幻のお店に辿り着くことができず。この日、パーティー会場に着いて、ここが雑誌に載っていたところだとすぐ解りました。感動です!

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右も左もぶどう畑、そして前方にはドナウ川、隣国スロヴァキアまでが見晴らせるという素晴らしい眺望のホイリゲです。

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とても暑い日だったので、お水のようにスパークリングワインごくごく!

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おめかしされたパーティーテーブルはこちら。

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お料理もどれもとーっても美味しくて、ワインが進む進む。

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彼のご両親がご結婚された時と同じ、コウノトリの巣をモチーフにしたウェディングケーキを再現。

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私はそんなにスイーツラバーではなく(飲兵衛なので辛党です笑)、特にウィーンのお菓子は甘過ぎる!と思っているのですが、このくるみのケーキ、本当に美味しかった。甘いー太るーと言いながら、皆で夢中で食べました。

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パーティーが始まって数時間たった頃、「さらわれた花嫁」というオーストリアの結婚式の伝統的な寸劇をするため、新婦の友人だけで別のホイリゲへ向かいます。これは私にとって初体験で、むしろ私たちが新婦にさらわれてミステリーツアーに参加しているようでありました。

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酔っぱらった身体でドナウ川方面への急坂を下るの、かなりきつい!!

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はっ!この為に「スニーカーを持って来てね」と言われていたのか〜。ホイリゲの山道くらいなら街歩きの靴で大丈夫、と思っていた私は甘かった!この際、ぶどう畑を転がって降りたいわ、と酔った頭で考えます。

やがてたどり着いたのは、こちらも眺望の素敵なカジュアルなホイリゲ。
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ここでひとしきり、新婦のご友人とまったり語ります。皆様、日本からいらしていて、私は全員と初対面だったのですが、仲良くしてくださり、意気投合して笑い過ぎてこの一日で腹筋筋肉痛。皆さんの優しさおもしろさに感動です。

その後、またメイン会場に戻り、暮れゆくぶどう畑を眺めながらおしゃべり。

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パーティーは深夜まで続きました。この日は満月。光り輝くパワフルな月も私たちを祝福してくれていましたよ。

新郎と私は、私が劇場で働き始めた年からの職場のおつきあいですが、彼の口から彼女の名前が初めてでた時、私はお二人が相思相愛だと知らなかったけれど、お似合いだな〜と思ったのを覚えています。だから、この佳き日を迎えられたことが嬉しくて。優しくて才能溢れる彼と聡明で美しく優しい彼女。お似合いのカップルは周りを幸福にしますね。

ご家族と仲良しのご友人と、ワイン自慢のホイリゲのお庭で、家庭料理をひとつのテーブルで分け合って食べて。アットホームで、自然の恵みに抱かれたウェディングパーティー。結婚式に豪華さは要らない。義理の人間関係も要らない。ただ、愛と幸福がそこにあって、皆が笑顔でいるだけでいい。この先ずっとこの幸福が続いていくことを皆で願う。これぞ私の理想の結婚式だな、と感動しっぱなしの一日で、まるで天国にいるみたいでした。彼女がウィーンに嫁いでこられたことも、この日生まれた素敵なご縁にも本当に感謝です。お二人の末永いお幸せをお祈りしています。