蜂蜜色のコッツウォルズにて

英国旅日記 13日目
母の所属するニューカマークラブの方々とコッツウォルズに行ってきた。
ちなみにニューカマークラブとは、オックスフォード大学に留学する研究者の配偶者が集まるクラブ。企業の海外赴任で来ているファミリーと違い、研究者は孤独な渡英が多いためだ。いろんな国から来ている人が多く、母はこのクラブをかなり満喫している模様。外国人の友だちもたくさんでき、英語でくだらない電話をかけていることもある(笑)「ヨーコさんの為の留学ですから。僕は内助の功に徹するよ」と父は言う。
そんな楽しげなクラブの面々で今日は隣町までバスツアー。
オックスフォード市内からコッツウォルズはバスで45分ほど。
コッツウォルズはのどかな田園風景が広がる小さな美しい村々だ。
私たちが訪れたのは「ケルムスコットマナー」というマナーハウス。
マナーハウスとは、貴族が郊外に別荘地として建てた邸宅のことだ。
邸宅といっても豪奢なものではなく、自然とともにゆるやかな暮らしを送ることが目的だったらしい。
ケルムスコットマナーは、ウィリアムモリスが友人ロセッティと共に建てた邸宅である。
こころの音色
ウィリアムモリスは日本では独創的な壁紙や布地デザイナーとしてその名が知られているが、
彼は詩人であり、工芸美術家であり、社会改革家であったという。
産業革命に反対し、機械を使わない手作りのアート&クラフトを生涯かけて追究した。
ちなみに彼もオックスフォード大学の出身。
「美しいものに囲まれて暮らしたい」という彼の美意識が隅々まで行き届いた家。
こころの音色
庭の花や木や鳥や虫たち、そして青く広がる空。
あの名作の数々は、それらからインスピレーションを得て生まれたものなのだね。
ガイドさんの話を聞いていて驚いたことが。
それはモリスの妻ジェーンという人のこと。
彼女はオリエンタルでとても魅力的な美女だったらしいのだが、
モリスの友人ロセッティもジェーンを愛しており、このマナーハウスには、
ロセッティとジェーンとモリスの娘2人が一緒に暮らしていたらしい。
妻の愛人が自分の旧友であり、仕事のパートナーだなんて…。
モリスは苦悩しつつも、妻の心のままに、と暗黙で認めていたらしい。
10年近くたって、ようやくジェーンはロセッティとの縁を切り、同時にモリスもロセッティとの縁を切り、
ようやく心穏やかな日々が訪れたという。
ジェーンはモリスを愛していなかったかというと、そういうわけではないらしく、
実際ジェーンは心を尽くして夫の仕事を手伝っていたという。
モリスの60歳の誕生日にも心のこもった見事な刺繍のベッドカバーをプレゼント。
そのカバーには、モリスの愛したコッツウォルズの自然、モリスの愛した言葉「IF I CAN」も刺繍されていて、
彼女の気持ちが今に生きる私の胸にまで伝わってきた。
愛人がいながらも夫を愛し支える。ちょっとマリーアントワネットに似ている?いろんな人生があるものだ。
でもジェーンは美人だからいいかと思ってしまったり(笑)
英国一美しい村とモリスが謳ったケルムスコット。
あぁ、私もこんなところで暮らしてみたい!
ジェーンのように?(笑)
こころの音色