マニュエルルグリ&仲間たち 

ウィーンではこの夏、一ヶ月に渡り、ウィーン国際ダンスフェスティバルが開かれています。
先週は「マニュエルルグリ&仲間たち」公演が4夜連続で上演されていました。
新聞の特集記事です。
$こころの音色
公演会場はブルク劇場。開演は夜9時だけど、辺りはまだ明るい。
$こころの音色
ため息がでるほど美しいロビー。
さすがは宮廷劇場。
$こころの音色
いかにもウィーンらしい豪奢な建築で、日本でも雑誌の表紙になったことも。
天井画の一部は、クリムトによって描かれています。
$こころの音色
このガラ公演では、9つの小品が上演されましたが、
一部だけ書き残しておきたいと思います。
まずは、パリオペラ座エトワール、オレリーデュポン&マニュエルルグリによる、
キリアン振付「扉は必ず…」
この作品は、絵画をモチーフにキリアンがルグリとデュポンの為に振付けたもの。
開演前、たまたま美術館に行っていた私は、さきほどの絵画鑑賞が続いている錯覚に陥り、
なんとも不思議な静かな感動を味わいました。シンクロ、でしたね。
しかし、キリアンという人は、なんて美しい、、なんて美意識に長けた人なのでしょうか。
(私たちのカンパニーでは、冬にキリアンの「 BellaFigura」が上演されていて、
私はその作品が大好きで、毎回時を惜しむように舞台に心酔したものです)
ルグリとデュポンのパートナーリングは、とても純度の高い崇高な域に達しているように感じました。デュポンはものすごい吸引力で周りの空気を自分の世界に惹き込み、ルグリはその逆で、周りへの深い愛に溢れた、愛のかたまりのような人で。その2人が一緒になった時に現われる世界が、あまりにも特別でうまく言葉に表せないのですが…。本当に素晴らしい芸術を観た時、そのディテールではなく、その向こうにある哲学や本質が見えるものだと改めて感じました。
パトリックドバナ振付「クリアチュア」は昨年夏、上野水香&バナで観た作品。
上野さんがしなやかで洗練されたオリエンタルな魅力を持って踊っていらしたのに対し、
秋山珠子さんは、理知的で柔らかで女性の優しさに満ちた魅力。
シャープなのに柔らか。日本女性の奥深い美しさと慈愛を、そこに観た気がしました。
そして、私の胸を打ったのが、ナチョドゥアト振付「アルカンジェロ」
秋山珠子&ディモキリロフミレエフ。
息つかせず、瞬きする間も惜しいような、張りつめた舞台。
どこまでもしなやかで、躍動感と生命力に満ちた二人のパフォーマンス、素晴らしかったです。
そして最後の作品、デュポン&ルグリによる、プレルジョカージュ振付「ルパルク」
私はこれまで、この作品の動画を何回観たかな。お二人によるこのバレエが大好きで。
モーツァルトのピアノ協奏曲にのせたこの作品を、ここウィーンで観ることができるなんて。
宮廷での恋模様を描いた作品なのだけど、ここは宮廷劇場だし、ほど近いところにあるブルク庭園にはモーツァルト像もある。完璧なシチュエーションというものが世の中には存在するのですね。
パフォーマンスの最中、メッセージが降ってきて、その貴さに涙がでてきました。
4月の日本公演の「in the night」を観た時も、ぼろぼろに泣いてしまったのですが、またもや。
私にとって、ルグリ監督は特別な人で、いつも大事なことを教えてくれる人なのです。
稽古場での姿、話してくれること、踊りから学ぶこと、記事で読むもの…様々ですが。
初めてお会いした日から、それらはいつもピンポイントで私の心に響き、助けられ、時に人生の指針になっています。
同じ時代に生きて、こうしてご縁を頂いていること、本当に感謝でいっぱいです。
最後に、ルグリ&デュポンの「ルパルク」の動画を貼っておきますね。
ちなみに、一回観に行って、その一瞬は永遠に胸に残ると思ったので、二回観にいかなくてもいいや、と思っていたのですが、楽日の朝、サイトを見ると、センターブロック最前列に一席だけ残席が!!これは行くしかない!と、一列目で観賞してきましたよ!
新たな発見もあったし、自分も舞台と一体化して作品を味わっているような、素晴らしい経験でした。