高知上陸(航海日誌2)

◆5月20日(航海2日目)
台風で荒れ狂う海をくぐりぬけ、高知県は宿毛に辿り着きました。
それにしても前夜の揺れはひどかった。映画「海の上のピアニスト」でピアノがゴロゴロ動くシーンがありましたが、まさにあんな感じ(ストッパーがあるので動きませんが)。身のキケンを感じながらピアノを弾くという稀有な体験をさせて頂きました。廊下はジグザグにしか歩けないし、お風呂はさながら大きな水槽を揺さぶられているようでした。
この世の生き地獄に、お先真っ暗な気持ちで眠りに落ちた一日目。
浅い眠りから覚めるとそこは高知県宿毛港。
前日の嵐が嘘のようなピーカンの太陽が照り輝いています。
お客さまは丸一日上陸して観光されるので(船に残る人も2割くらいいますが)私も今日は半日オフ。
そこで四万十川を見にいくことに。当初一人ででも行くつもりだったのですが、他の音楽家さんも乗り気になってくれたので、ヴァイオリニスト、伴奏ピアニスト、ジャズドラマー、ジャズピアニスト、私の五人で向かうことに。ツアコンは私!いえ、高知初めてなんですけどね(笑)
宿毛港からタクシーに乗って宿毛駅へ。そして土佐くろしお鉄道に乗り、中村駅へ。駅前で自転車を借り、いざ四万十川上流へ。田舎道をひた走ります。普段めったに外で遊ばない音楽家連中ですから、それはもう大はしゃぎ!私もわざと水溜まりの上を走って水しぶきをあげたり、悪ガキっぷりを発揮していました(笑)
一時間くらいで辿り着いた佐田の沈下橋。ここは柵のないことで有名な橋。水を分けて進むその感覚は、さながらモーゼの十戒。少し恐かったけど気持ち良かった!
駅へ戻り、美味しい讃岐うどんを頂いてから、再び船へ。
宿毛港では市民総出で出航セレモニーを催してくれました。
ふるまってもらったご馳走の美味しかったこと!
そして別れの時。船からは紙テープが、岸からは風船が放たれ、海を鮮やかに彩りました。夕刻の宿毛湾にいつまでも響く地元高校ブラバンの「瀬戸の花嫁」の音色は胸にしみました。
本当に旅はいいですね。
船酔いももう平気です。私は元気です。
さきほど名古屋港に戻り、無事ひとつめのクルーズを終えました。
これから乗組員だけで大阪港へ回航します。
今日はもう仕事がないので、甲板にでて美しい夕焼けと星空を眺めるとしましょう。

いってまいります

ただいま名古屋港です。
小雨降るなか、16日間お世話になる船と初めて対面しました。
なんと立派な美しい船でしょう!その凛とした佇まいに圧倒されました。
こんな美しい船と共に旅ができるなんて嬉しいです。
ということで、これより海へ出稼ぎに行って参ります。
台風が近づいているという噂ですが(ToT)荒波に挑んできます。
ま、台風以前に推定20キロのスーツケースと格闘しつつ、通勤ラッシュの中名古屋港まで辿り着いただけで、既によれよれなのですが…。
旅の最初からこれでは、波瀾万丈の香り濃厚ですな(笑)
一時間後にはファーストステージ。これから向かうのは高知県足摺岬ですが、「80日間世界一周」でお客さまをお迎えしたいと思います(笑)
それではいってきます!

オアシスにて

私は行き詰まるとベランダに出る。
ベランダは私のオアシスだ。
私の住むマンションの9階には、とても心地いい風が吹いていて。
眼下には新緑の街路樹がきらきら輝いている。
椅子を持ち出してきて、今日はベランダでお茶。
至福のひととき。
お隣りさんからピアノの音色が聞こえてくる。
隣りに住んでいる男の子はまだ15歳だけれど、とてもピアノが上手で、
ショパンのスケルツォや、ラフマニノフの「音の絵」なんかをバリバリ弾く。
そして驚くほど練習熱心だ。弾けないパッセージを果てしなく繰り返し練習する。ピアノを嫌いな人が聞いたら、きっと気が狂うであろうこの繰り返し!
誰だって、どんな難局だって、打破する為必要なのは小さな積み重ねなのだと、私は15歳の少年のピアノに救われていたりする。
しかし、いい風だ。
今日は美しき五月晴れ。
こんなGWも悪くない。