瀕死のミュージアム巡り

英国旅日記 24日目
この日、家族4人揃ってロンドンへ。
ゴーイングマイウェイな一家の意見が揃うのは珍しいことであります。
今日のテーマは「博物館に行こう♪」
そう、ロンドンには星の数ほど博物館があるのに、
私、一度も訪れていなかったのですよね。
しかししかし「どこに行く?」という話をすれど、全く意見がまとまらず。
兄なぞ「ロンドンから電車に乗って…」と全然違う場所を言い出す始末。
そして、出た結論がコレですよ。
「一日自由行動。午後5時、ナショナルギャラリー前集合。」
やっぱりな。
まぁ、博物館や美術館って、自分のペースで巡りたいものだしね。
そんなわけで、それぞれが好き勝手にミュージアム巡りをすることに。
私のチョイスはこれ。帝国戦争博物館→テートモダン→大英博物館→スタンフォード本店(これは本屋。世界最大地図専門店)→ゴール★ナショナルギャラリー。
え?欲張り過ぎ?そしてオタク?(笑)
自分でもちょっと思いました。
何のスタンプラリーよ?
だけど、ロンドンに行くのはもう最後。
回れるだけ回っておきたかったのです。
まずはテムズ川を渡り、向こう岸へ。
ロンドン1カッコイイ橋、タワーブリッジを渡ります。

こころの音色
強い風に吹き飛ばされそう!!
ここまでは両親と私の3人一緒。
(兄はバスから降りるや否や、姿を消しましたw)
その後、私は大本命「帝国戦争博物館」に行くため、ランベスへ。
「もの好きね…」と、白い目の両親と別れ、強気に参ります。
いえ、私、決して帝国戦争フェチではないんですよ(声を大にして)
(長崎の原爆資料館には3度も行ったけれどw)
ただね、ここにはアウシュビッツの展示があったので。
見ておきたいな、と。
ちなみに、このランベスという土地、ミュージカル「ミー&マイガール」の舞台となった下町で、一度訪れてみたかったのです。
蒲田とか柴又とか、活気のある街をイメージしていました。
しかししかし、実際のランベスは、多分被差別地域。
街ゆく人のほとんどは、黒人さん。
町並みもいかにも殺伐とした感じ。昼でもなんとなく怖い!
ミュージカルナンバー「ランベスウォーク」なんて歌えるわけもなく、
極寒のランベスを早歩きで、戦争博物館へと向いました。

こころの音色
博物館に足を踏み入れると、軍機やら何やら、大仰に飾られています。
が、私はそちらには全く興味がないので、まっすぐアウシュビッツ展へ。
・・・・・・・・・・・・・・
1時間ほどじっくり見て回りましたが、言葉を失いました。
これまで、本やドキュメンタリーで幾度となく触れてきましたが。
実際、遺品やら写真をこの目で見るともう。
恐怖、怒り、哀しみでごちゃごちゃになった心を鎮めるため、
出口に置かれていたノートに、渾身の力をこめて「世界平和」と縦書きで記してきました。
はぁ。。。
そして、このアウシュビッツ展で、神経が麻痺してしまったのか、
その後の自分の行動をよく覚えていないのです。
地理には強いはずなのに、地図もよく読めず、さんざん道に迷い、テートモダンに行くのを忘れ、大英博物館の中で迷子になり、何体かのミイラに会っただけで終了。
よれよれになりながら、ナショナルギャラリーに向かい、
家族の顔を見たときには、涙が出そうなほどやつれていました。
家族も、朝とは別人の私を見て驚いていました。
兄が「フェルメールとレオナルド・ダ・ヴィンチの絵だけ見よう」と。
広いナショナルギャラリーの中をどう歩いたのか。
いつの間にか、ダ・ヴィンチ「岩窟の聖母」の絵の前にいました。
光に包まれるかのように、ふわーと不思議な感覚に。
絵を見て、こんな感覚に陥ったのは初めてでした。
その場に座り込み、目が離せずにいました。なんでしょうね。
極度の疲れの中、私はこの絵に救われたのだと思います。
そして、幼い頃からそばにありつつ遠い存在だった、キリスト教精神と私の心が通い合った瞬間でもあったかと。
ちっぽけな、ちっぽけな私がそこにいました。
結局、ほとんどのものが計画倒れに終わりましたけれど。
家族のありがたみも、平和の尊さも、ちっぽけな自分も。
一生、心に刻みつけておきたいな、と。
それにしても、ロンドン、、刺激の強い街でありましたね。

こころの音色
レスアースクエア、チャップリンの銅像

英国ロイヤルバレエ「白鳥の湖」

英国旅日記21日目
先日のロイヤルオペラに続き、今度はロイヤルバレエを観るため、またもや、ロンドンのロイヤルオペラハウスへ。演目は「白鳥の湖」ぴかぴか(新しい)
夢のロイヤルバレエ初鑑賞なのですが、現実はいつだって理想どおりにいかないもの。今回の席は5階立見席!しかも舞台の半分(下手側)しか見えない席です涙半分・・・半分って。
ちなみに全く見えない(音だけ)席もあるのです。階級社会ならではでございますね。

こころの音色
まぁ最も人気の高い演目だから、立ち見席でも仕方ない。だけど、半分って、真ん中は見えるのだろうか。
バレエは舞台の真ん中が一番大切なんですけどぉ。
大好きなあのシーンは上手側だったかな、下手側だったかな、と色々不安を抱きつつ、客席につきました。
ロイヤルオペラハウスの客席はまるで迷路。
特に上の階だと、エントランスから自分の席に着くまで10分かかります。
(ロイヤルを観劇される皆さん、時間には余裕をもっておこしください(笑)
客席につくと、案の定迷子になっている日本人女子二人組発見。
昔レセプショニストをやっていたクセでこういう人をみると案内してあげたくなるのですよ。
よく知らない劇場なのにおせっかいを申し出ると、たまたま隣の席でした(笑)
こころの音色
さぁ「白鳥の湖」の開演です。私の席は、舞台は半分しか見えませんが、その代わりオーケストラピットの真上で、私にとってはなんとも嬉しい席だったのです。オペラグラスを使うと指揮者のスコアの書き込みまで見えそうよ(笑)すっかり仕事モードになり、「バレエつき《白鳥の湖》全幕演奏会」に頭を切り替える。ちょっと悔し紛れだけれど(笑)
この日のオデット/オディールはサララムhttp://info.royaloperahouse.org/ballet/index.cfm?ccs=247&cs=1681 、王子はイヴァン・プトロフhttp://info.royaloperahouse.org/ballet/index.cfm?ccs=247&cs=520 。美男美女ですね。サララムのオデットは、とても神秘的で気品に溢れている。背中が美しい。ポアントでバランスをとる静止状態がいちいち美しくて見惚れました。バレエは躍動・流動の美であるけれど、静止の美でもあるのですね。
特筆すべきは、2幕の王子と白鳥のアダージョ。それまで気品に溢れていたオデットが、だんだん恋に落ち、温度が増していくさま・女心がよく表現されていました。このシーンにいちばん好きな振り付けがあるのですが、そこは下手側でバッチリ観ることができました。よかった(笑)あと、素晴らしかったのが、このアダージョのヴァイオリン独奏。同じく3幕の「王子と黒鳥のアダージョ」にもヴァイオリン独奏が出てきますが、今まで聴いたなかで、文句なしに一番の演奏でした。チャイコフスキーヴァイオリンコンチェルト「白鳥」とでも名づけましょうか(笑)のちにチェロ独奏が入ってきて、デュエットになるのですが、それも舞台での美しいデュエットとあいまって、素晴らしい効果を呼んでいました。思わずオケピのソリストに見入る私。立見席、結構楽しめるじゃないの(笑)
そして「白鳥の湖」でいちばん盛り上がるのは3幕ですよね。幕開けの音楽もまた楽しい。音楽が鳴った途端「ん?」何かが違う。私はオケピを凝視。と次の瞬間、わらわらと7人くらいのオケメンバーが遅れて走りこみ、曲の途中から演奏に参加。え!?そんなことがあっていいの???何かトラブルがあったの?楽屋のトイレが込んでたとかじゃないよね?後でこっぴどく叱られるのだろうか。よくあることではないだろうな…。
やがて舞台は妖艶な黒鳥オディールの見せ場へ。そう32回転フェッテ。これを観ずして「白鳥の湖」を観たといえるだろうか。真ん中は見えるのか?(←切実!)もうね、背伸びして身を乗り出して見ましたよ!サララム、ブラビッシモです。シングルダブルシングルダブルダブル…合計55回転くらいはしてたのでは!?素晴らしいですね。実は3幕に入ってのサラは少しお疲れ気味に見えたのですよ。だから手に汗握って観てたのですが、そこは見事に決めてくれました。よかった。(黒鳥32回転が失敗した白鳥の湖なんて惨めよね)
そして最終幕。悪の象徴ロッドバルトが破れ、王子と白鳥が幸せに暮らしました。
ではなく王子と白鳥が湖に身を投げ、天国で幸せになるという解釈でした。
ロイヤルの白鳥、踊りは半分しか観ていませんが(笑)、音楽も装置も衣裳も素晴らしかったですよ。
伝統的でありながらもモダンで。白鳥たちはすべてロマンティックチュチュ(クラシックチュチュを着ていたのはオデット/オディールだけ)に身を包み、ヘッドドレスに繊細な飾りが施されていました。舞台セットはまるで「オペラ座の怪人」のように神秘的でファンタジックでしたよ。ほんと「白鳥の湖」は何度見ても飽きないし、素晴らしいですね。
こころの音色
それにしても。この日は見られなかったけれど、吉田都さんの素晴らしさを改めて思いました。階級社会イギリスの、このロイヤルオペラハウスで10年もプリンシパルを務め続けるのは並大抵のことではありません。ロンドンに佇むと、アジア人差別の空気を感じることもあります。そんな中、彼女はイギリスの頂点で踊り続けているのです。彼女は努力の人。私は彼女の才能の足元にも及ばないけれど、人生でするべきことはまだまだあるに違いない。
ちなみに、立ち見仲間の日本人女子二人組。
話してみると、マンチェスターのバレエ学校にこの春から留学しているらしい。ふたりとも16歳。バレエの話で盛り上がり、帰りには「おいちゃんがご馳走してあげるから、お食事でも」という気分になったのだけれど(美少女の前だとオッサン感覚になる)、マンチェスターから日帰りで来ていて(!)とんぼ帰りしなければいけないらしく、後ろ髪ひかれつつお別れしました。でも異国の地で頑張る若い日本人に会えて、とても嬉しかったのです。
Girls be ambitiousぴかぴか(新しい)
ロイヤルバレエhttp://info.royaloperahouse.org/Home/