万聖節とベートーヴェン

今日は万聖節。カトリックの国であるオーストリアは、祝日です。
11月1日万聖節、そして2日の万霊節は、死者の魂を弔う日。
日本のお盆のような感覚ですね。
(ちなみに、ウィーンでは、ハロウィンのイベントはほとんど行われていませんでした。
ショップディスプレイも仮装も見かけませんでしたよ)
さて、今日はせっかくの万聖節ということで、
偉大なる音楽家の魂に会いに、中央墓地に行ってきました。
薔薇を手に、黄金色に染まる墓地を歩きます。

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シューベルト

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ブラームス

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ヨハンシュトラウス二世

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モーツァルト(記念碑のみ、写真中央)

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ベートーヴェン

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偉大なる音楽家たちに、一輪ずつ薔薇をたむけてきたのですが、
なぜか、ベートーヴェンのお墓前で涙がとまらず。
特別ベートーヴェンが好きというわけではない私なのに、やはり彼の存在はすごくものすごく大きかった。
あと、彼の生き様に共感、シンクロした、というのもあるかもしれません。
しばらくそこに佇み、彼の魂を感じ、長く静かな時間を過ごしました。
ここに来るのは初めてではないのですが、その時々によって、感じるものも違う。
そもそも、最近抱えている音楽上の悩みをなんとか打破したくて、ここへきた私。
ベートーヴェンほどの偉大な音楽家だって、悩み苦しみ、
それが作品を生み出すエネルギーに繋がったのだとも思うし。
並べるのもおこがましい小さき身の私ですが、悲観的にならず、光を見い出そう、と。
お墓参りのあとはお酒…というのは、日本のお盆と同じ流れでしょうか(笑)
この季節のウィーン名物、シュトゥルムを。

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新酒ができるまでのわずかな季節に飲まれる、発砲にごりぶどう酒。
初めて飲んだのですが、とても美味しかった。

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新酒までの季節、もう一度飲みたいな。
普段、どこかに出かけることすらままならなかった(気分的に、ですが)私にとって、
万聖節のお墓参りは、ウィーンに来て初めてのお出かけでもありました。
お出かけといっても、家から15分程度なのですが…。
彼らが私の家と、ごく近いところに眠っているということ、
身近に感じるといえば恐れ多いのですが、
音楽の都に住み、楽聖と共に在る喜びを感じることができた、素敵な万聖節でした。
また訪れます。
明日からの仕事も頑張れそう!
追記 
お墓参りからの帰り道、鐘の音に吸い込まれるように、教会へ。
万聖節のミサに、末席にて参列させて頂きました。
神父さんの言葉はあまり理解できなくても、
その場にいるだけで、気持ちが穏やかになっていくのを感じました。
きっとギフトであり、必然だったのだと思います。
幸せな万聖節でした。

KHP弾いてきました!!

9月21日、初KHP(ピアノ付ステージリハーサル)、無事終了しました!
この日、指揮者がコンツェルトハウスにオケ練に行ってしまっていたので、指揮者なしでのリハーサル。
心細く、不安に思っていると、なんと、ルグリ監督が、
「Shino, I’ll stay with you.」と言って、オケピ前に来てくださり、
「テーマとヴァリエーション」のリハーサル中、ずっとそばにいてくださりました。
普通、監督は客席のど真ん中で舞台全体を観るものなのです。
だけど、新人の私一人にオケピを任せるのは不安だったのでしょう(ごめんなさい!笑)
しかも、「幕が上がったら合図するから弾き始めてね」とか細かく教えてくれて。
ルグリがずっとそばにいてくれて、私は安心して落ち着いて弾くことができました。
次の日、ルグリに「昨日はどうもありがとう」とお礼を言うと、
「シノにとっては初めてのことばかりでしょ?僕もサポートしたいと思っているよ」と
笑顔でおっしゃってくれました。
こんなに優しい監督のもとで仕事ができて、幸せですね。
KHPは滞りなく終了。
自分としては反省点もあるのですが、
リハーサルを聞いていた同僚たちには、「シノ、よかったよ。まさか全部の音を拾って弾いているのか?クレイジーか?信じられない!その小さな体のどこにあんなエネルギーが!」と口々に言われました(笑)
チャイコフスキーの交響曲をピアノ一本で弾くのは本当に大変だったのですが、
最後の華やかなポロネーズを弾いている時は、もう本当に楽しくて幸せで!
ここへきてよかったなと。
まだまだ未熟ですが、この経験を明日への糧に、これからも頑張ります。
$こころの音色
記念すべき初KHPの日に、ウィーン国立歌劇場オケピから見た風景。
次は、お客さんで溢れた劇場のオケピでピアノ弾いてみたいな(夢は大きく!笑)

はやいもので

ウィーンに来て、一ヶ月がたとうとしております。
仕事が始まってから3週間がたち、生活のペースも徐々にできてきました。
基本的には、とりたてて問題もなく、新生活を楽しんでいます。
これはひとえにまわりの方々のおかげ。
特に3人のピアニストの同僚(大先輩です!)がとてもよくしてくださり、いつも助けられています。
仕事のこと、音楽のこと、生活のこと、英語、ドイツ語、、、、
いつもたくさん教えてくれて、たくさん話をしてくれて。
同僚というより、保護者?家族?(笑)
そんな恵まれた劇場生活をスタートさせたわけですが、
日々の仕事について、少し書きたいと思います。
バレエ団では、毎日いろんな演目のリハーサルが平行しておこなわれています。
今週金曜日にプレミエを迎える、バランシン「ストラヴィンスキーヴァイオリンコンチェルト」、ロビンス「グラスピース」、ロビンス「インザナイト」バランシン「テーマとヴァリエーション」、
フォルクスオパーで上演される、パトリックドバナ「マリーアントワネット」、
10月プレミエの「ラシルフィード」…
ダンサーもスタッフもフル稼働ですね。
私はどの演目も初めてなので、とにかく皆さんの足を引っ張らないよう、毎晩リハーサルが終わったあとに、ピアニスト部屋にこもって、ひとり黙々と練習。
日本でもわりとこんな風に生活していたので、それを特別なこととは思っていないのですが、
こちらでは特異な日本人気質に見えるのでしょうか、、
「なんでそんなに練習するの?」と聞かれること多々。。。
「あなたはすごく上手に弾けているのに。そんなに練習する必要ないよ」と…。
劇場内は特に防音が施されておらず、私の夜練は夜な夜な劇場内に響き渡っているらしく(笑)
「今の自分の演奏に満足していないから。完璧に弾きたい」といっても、
「完璧なんて目指さなくていいんだよ。シーズンは長い。もっと力をセーブしなさい」と言われる。
それもそうなのですけどね。完璧に弾くことがすべてではないし。
でも、精一杯やる、のが日本人気質なんでしょうね(笑)
さて、実は今週、私の夢がひとつ叶います。
金曜初日の「バランシン&ロビンス」公演の舞台稽古(KHP)で、ピアノを弾くことになったのです!
私は新米なので、当初は舞台稽古のピアノなどという責任重大任務を負う予定ではなかったのですが、
10日ほど前に、リハーサルでの私のピアノを聞いていた先輩ピアニスト氏が「この演目、舞台稽古はシノが弾けばいい」と言ってくれて、急遽私に変更!!
劇場で働く以上、当たり前の業務ではあるのですが、実はこれはバレエピアニストとしてのひとつの夢でした。
昔、オペラの舞台稽古では弾いたことがあるのですが、バレエのKHPは弾いたことがなかったのです。
初めてのKHPを、ウィーン国立歌劇場で!!
責任重大だけど、すっごく楽しみです。
曲は、チャイコフスキーの管弦楽組曲3番。バランシン振付「テーマとヴァリエーション」です。
これ、ピアノで弾くと、ものすごく大変なのですが、本当に素敵な曲。
今日もメトロノームかけながら、同じパッセージを鬼のように練習していたら、
「アーユークレイジー?」と言われましたが、気にしない(笑)
やっぱり不安要素はひとつでもなくしておきたい。
主役二人も初役で、とても大変な踊りを全うするため、毎日真剣勝負。
(主役を踊るリュドミラは、「シノ、まだ帰らないの?まだ弾くの?」と、よく私の部屋を訪ねてきてくれる、彼女も夜遅くまで一人で練習しているがんばり屋さん!)
よい舞台をお届けできるよう、ダンサーの支えになれるよう、私も頑張ろう。
ということで、次回は、KHPレポートをお届けしたいと思います!