同郷の若き才能たち

夏休み、まだ日本には帰らず、語学学校に通いつつ、
ウィーンでゆったり過ごしています。
先日、語学学校の帰りに劇場に練習しにいったら、様子が変。
トイレや廊下に、日本語での案内の貼り紙が!
なんと、今日は日本の高校吹奏楽部がウィーン国立歌劇場でコンサートをやると!
私の楽屋の隣が高校生達の控え室で、制服姿の大阪弁の高校生で溢れかえっていた。
なんと不思議な光景(笑)
関係者の方に話を聞くと、ここ大阪桐蔭高校吹奏楽部は三年連続全国大会金賞を取っている、
向かうところ敵なしのブラスバンドらしい。
是非聴きにきてくださいと言われ、同郷(私は大阪出身です)のよしみで客席にいってみた。
うーん確かに上手い!それぞれの技量が高校生の水準の遥か上をいっているし、
アンサンブルも見事。
彼らが普段、どれだけの練習を積み重ねているのか、想像にかたくない。
楽屋の廊下でも時を惜しむようにグループごとに合わせていた。
私たちの劇場のオケは、普段、リハなしで本番を弾かねばならないことが多い。
それはもちろん何かを怠っているわけではないし、
そのシステムで世にも美しい音楽を作り上げられる底力を誇らしく思っている。
しかし、今日の高校生たちの音はその対極に位置するもので、
瑞々しく誠実なパワーに溢れていて、とても眩しく、私の胸をうった。
だから、ありがとう。素敵な演奏を聴かせてくれてありがとう。
多分、この子達はその世界のエリートなのだろう。
全員が全員音大に進むような雰囲気の部だ。優秀な音楽家もでてくるだろう。
そんな彼らの道の途中で、ここウィーンのオペラハウスで素敵な演奏をして、
たくさんの人にブラボーをもらった今日のことをずっと覚えていてほしい。
キラキラした彼らのゆく先にたくさんの祝福がありますよう祈りつつ、
私も大きな拍手を贈ってきた。

シーズン終了!!

ウィーン国立歌劇場2011/12シーズンが、
昨日6月30日をもって無事終了しました。
私にとっては初めてのシーズン、休みなしで走り抜けた10ヶ月は、
やっぱりあっという間だったかな。
10ヶ月間、ほとんど連休もとれず、途中でバテてしまいそうになることもあったけど、
なんとか病欠することもなく、無事シーズンを終えることができました。

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これは、今シーズンで弾いた楽譜。
圧倒的に経験値が少なくて、来るもの全て初めての演目ばかりだったし、
泣くほど苦労したものもあるけれど、
これらのレパートリーは、私の大きな糧になっていくことでしょう。
シーズン中はやっぱり忙しくて、そんなにたくさんは観られなかったオペラ。
今週はドンカルロと、最終公演ルチアを観に。
終演後、私たちの指定席、キュンストラーロジェにて

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(ちなみに、今シーズン客席で観たオペラを数えてみました。ドンカルロ、アラベラ、椿姫、セビリアの理髪師、トスカ、フィガロの結婚、ランメルモールのルチア、アルチーナ、魔笛、薔薇の騎士、こうもり、オテロ、12作品というのは、シーズンの演目の3分の1くらい?)
そしてそして、一年間共にしたピアニスト四人で打ち上げ。

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私以外の三人は、20年以上この劇場で働いている大ベテランで、
私は三人にお世話になりっぱなしだった。
歳が離れていることもあり、可愛がってもらっていて、
新しい環境で戸惑うことも多いなか、どれだけ助けてもらってきただろう。
それぞれのキャラクターもかなり面白くて、
集まると年甲斐もなく大騒ぎするような、愛すべき仲間です。
私のウィーンの家族!!!
尊敬してやまない監督のもと、信頼する仲間に囲まれて、
なんとかシーズンを終えられたのは、周りの方のおかげだと思っています。
来シーズンは、もっと大きな戦力になれるよう、成長したい。
さあ、夏休みだーーー!!!
P.S.
ヌレエフガラ公演については、想うことが多かったので、また改めて書こうと思います。

ヌレエフガラ

今シーズン最後を飾るヌレエフガラを3日後に控えて、千本ノック地獄。
担当じゃない作品のリハも初見でガンガン弾いている。恐ろしや。
今日はステージリハーサル弾いて、明日はオケ練、そして土曜日GP&本番!
この素敵なガラで、私はピアノとチェレスタを弾かせてもらえることに。
プロコフィエフ「ロメジュリ」のバルコニー、チャイコフスキー「くるみわり人形」の金平糖、
ストラヴィンスキー「ロシア風スケルツォ」、リヒャルトシュトラウス「四つの最後の歌」。
大好きな作曲家たちの作品をこのオケの中で弾けるなんて、なんと贅沢なことか。
ソロもたくさんある。

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こちらの写真は、劇場のオーケストラピットの脇に置いてあるチェレスタ。
エレクトラやトスカなど、今週はチェレスタが使用されるオペラが上演されているので、
今週はここにチェレスタ常備。
人前でチェレスタを弾くのは今回初めてなので(なのに、大きなソロが!)
時間のあいている時、毎日のようにここへきて、楽器を触らせてもらっている。
今日は同僚が私の練習につきあってくれ、楽器のことを色々教えてくれました。
(ついでに写真も撮ってくれました)
経験の浅い私にとっては、ひとつひとつが大変で、胃が痛くなるけど、
きっと舞台に乗っている皆にとっても、私以上に大変な日々なのだと思う。
この一週間、稽古場で何人の涙を見たかな…。
きっと、みんな自分の限界に挑戦しているような、そんな印象を受ける。
だから、私も。頑張ろう。あと少し!
ひとつ、作品をご紹介しますね。
ストラヴィンスキーの「ロシア風スケルツォ」に、マネンが振付けた、”BlackCake”。
音楽性豊かな振付が見事で、オトナの小粋さが楽しめる。
ピアノソロパートに、私はドキドキなのですが…