海の上のピアニストの一日

船は「動くホテル」。
生活は快適な上、長い船旅でお客さまが飽きないよう、様々なプログラムが組まれています。プール、ジム、図書館、映画館、教室、お茶室、カジノも揃っています。私はもちろん業務乗船なのですが、基本的に仕事以外の時間はお客さんと同じように船を楽しんでいいと言われており、船ならではのいろんな経験をしてきました。船も満喫したいし、仕事も大変だし、毎晩の飲み会も楽しいし・・・とくると寝る時間がありません!!
そこで、現代版「海の上のピアニストの一日」を紹介したいと思います。
◇8:00AM
朝ごはん。ホテルの朝ご飯ビュッフェが大好きな私は、無理やり早起きして朝ご飯を食べます。後半戦は眠気が勝っていましたが(笑)
◇9:00AM 
1回目のステージ。 朝なので軽めの曲を。
爽やかなサウンド・オブ・ミュージック等がいい感じ。
◇10:00AM
誰かを誘ってジムに行きエアロバイクなんぞを。
海が見渡せるジムでiPodを聴きながら爽やかな汗を流す。
(しかし、元々体力がない上寝不足なので、30分くらいで終了。「消費カロリーごはん4分の1杯」などと表示され、愕然。)
◇11:00AM 
次の演奏プログラムを練る為、部屋にこもって練習。iPodから採譜。
◇12:30PM 
昼食。天気のよい日はデッキランチになることも。
穏やかな瀬戸内海でジャズの生演奏をバックに頂くランチは最高でした。
◇13:00PM 
ダンス教室にでかける。船ではいろんなカルチャー講座が開かれています。私は社交ダンスにはまってしまい、毎回真剣に練習していました。
◇14:00PM 
船の中をお散歩・昼寝・図書館で読書。
◇15:00PM 
ティータイム。バンドマンもしくは声をかけてくれたお客様と一緒に。
◇16:00PM 
部屋で練習。船での演奏はいわゆるBGMとは少し違い、お客さんがちゃんと耳を傾けてくれ、一曲ずつ拍手をくれるので、結構プレッシャー。だけどやりがいも。
◇18:00PM 
演奏。この時間はボサノバやジャズを。演奏後、余裕があれば、夕焼けを見に12階デッキにでます。
◇18:45PM 
ディナー。夕食はバンドマン5人プラス私、全員揃って食べます。楽しい食卓でした。ドレスコードがインフォーマルの日なんかは、みんなでオシャレしてフルコース♪
◇19:50PM 
演奏。夜のしじまっぽい(?)音楽を。リクエストにもその場で答えます。
◇20:30PM 
メインショーを観にメインラウンジへ。
ステージを観つつ、お客さんの反応を観察。
◇21:30PM 
私の最後のステージ。ピアノラウンジにて。ピアノラウンジはほぼコンサート状態。毎回がんばってクラシックを弾いていました。毎晩違う曲を弾かなきゃならないのでキツイ!
◇22:00PM 
すべての仕事を終え、解放感に浸りつつ、ダンスパーティーへ。ジャズバンドの生演奏なので、しっかり見学。…の筈が、いつのまにか踊りが主目的に(笑)いろんなソシアルダンスを教えてもらいました。
◇23:00PM 
仕事あがりのバンドマンと夜食へ。焼きおにぎりやおうどんが美味しいの♪
◇24:00PM 
シャワーを浴びて(大浴場もあるけれど、私はほとんど行かない)から、メインホールでピアノの練習。ホールでの練習は夜しかできないのですが、ここ、幽霊が出るという噂。確かに、か~な~り不気味な気配が漂っていました。だけど、練習しないわけにはいかないので、泣きそうになりながらさらっていました。
◇25:00PM バンドマンの飲み会に合流。毎晩3時頃まで音楽や恋愛について飲み語る。しまいには空が白んで、そのまま朝日を見にいくことも一度や二度ではなかった。。
こんな毎日を送っておりました。私、一体いつ眠っていたのでしょう?
1日が24時間じゃ足りない!この合間にドレスを着たり脱いだり、髪をセットしたり、、、本当に大変でした。いつも「志野ちゃんは本当に元気だねぇ」と言われていたけど、陸におりてすっかり脱力。ただいま、リハビリ中デス。。

ビジュアルの追究

6月舞台の映画撮影を、横浜イギリス館にておこなってきました。
CM撮影は一度経験あるけれど、映画撮影は今回初めてです。
出演者は役者2名・ダンサー2名・ソプラノ歌手と私。
4分弱の映像をつくるのに8時間。
いや、それでもとてもタイトなタイムスケジュール。
朝9時、現場に着くなり、ボスにつけまつげを手渡される。
「は?私もですか?」
「そうよ、思いっきり歌舞伎メイクに仕上げて」
(・・・どちらかというと宝塚風にしてみたい)
普段あまりメイクはしないので、こういう時はとても愉しくなりますな。
ダンサーのお二人に指導してもらってつけまつげデビュー。
そして、二十歳の時に母に買ってもらった桂由美のドレスを装備。
何を隠そう、その頃の私はもっと痩せてたので、きつくて仕方ない。
1週間の風邪ダイエットのお陰で?ギリギリ着られたのは幸いでしたが、
撮影が終わる頃には、肋骨が折れそうでした!
ともあれ、たて巻ロールのカツラに羽をつけて、気分は宝塚(笑)
小悪魔ダンサー二人はめちゃくちゃキュートだし、役者さんは時代がトリップしてるし。ソプラノ歌手はさすがの女王の貫禄。いや、皆さんすごい存在感です。
撮影はけっこう過酷でしたね。
ビジュアル重視の映像なので、モニターを見ながら、それぞれを微調整していく。私もありえない弾き方をしたせいか、翌日は筋肉痛になりましたよ。
でも限られた時間のなかで、それぞれが力を出し切るプロ仕事。
普段関わりのない分野の人と仕事するのは本当にいい刺激になる。
素晴らしきコラボレーションでした。きっといい作品に仕上がっていると思う。
舞台を観に来てくれる皆さん、楽しみにしていてください。
関係者のみなさん、お疲れさまでした。あと2ヶ月ヨロシク!

一生忘れない

人生には特別な夜がある。
その日を境に自分のなかで何かが生まれてしまうような。
今夜、もしかしたら私にとってそんな夜だったのかもしれない。
バイエルン国立歌劇場オペラ『アリオダンテ』公演を観てきた。
今までオペラは何十本も観てきたし、自分自身も関わってきた。
だけど、その価値観がくつがえされるほどのステージだった。
これが世界の頂点か。何度鳥肌がたっただろう。
音楽のもつ力・人間のもつ力を、更にはこの世の美しさを知った。
今宵、私をこの場に導いてくれたジョナス総裁とも再会し、お話することができた。
一生音楽と共に生きようという勇気をもらった。
何かが私のなかで確実に生まれた。
人生は点の連続であるから、先のことは分からない。
だけど、今夜感じたもの・生まれたものを一生心に刻んでおきたいと思う。
自分の道を歩くって、生きていくってこういうことなんだな。
*『アリオダンテ』
http://www.nbs.or.jp/stages/bayerische/perform03.html