ピアニスト人生最大最高の無茶振り!

2014年1月10日、私はひょんなきっかけで、ピアニスト人生最大最高の無茶振りを頂き、
ウィーンの音楽の殿堂、楽友協会黄金ホールで演奏してきました。

あの日、楽友協会では日墺文化交流事業の一環としてコンサートが開かれ、
日本から日舞の名取りの方が踊りにいらした。
当初、録音テープで公演する予定だったのだけれど、
音楽の殿堂楽友協会では録音での公演は許さないと当日になって言われたそうだ。

このままだと公演ができない。
たくさんの来客が見込まれるなか、舞台に穴を空けることになる。
夕方になり、オペラ座で稽古中の私の元に連絡が入った。
「緊急事態なのです。今夜、楽友協会でピアノ生演奏で日舞の伴奏をしてくれませんか?」と。
曲目はドビュッシーの月の光、ラデツキー、そして、日本民謡あやめ、黒田節。

もちろん楽譜すらない状態での依頼だった。

仕事をしながら、私は考えた。月の光は、2年以上人前で弾いていなくても私の十八番だ。ラデツキーはきっとなんとでもなる。
黒田節とあやめは聞いたことがないけれど、1時間あれば、耳コピできると思う。出来る!私のなかで、「NO」という選択肢は1%もなかった。「5時半に仕事が終わったらすぐ楽友協会に向かいます」と電話を切った。

着るものはどうしよう。5時半に仕事が終わって開演が7時。
リハすることを考えるとドレスを用意する時間はない。
幸い、オペラ座の楽屋に黒の膝丈ワンピと本番用靴を常備してあるので、それを掴んで楽友協会に向かった。オペラ座から楽友協会は徒歩7分。youtubeでラデツキーを聞きながら…。

会場につき、「お役にたてるかは分かりませんが、合わせてみましょう」とステージに向かった。15分のステージリハでとりあえず月の光とラデツキーを。舞踊手がどんなテンポをどんな音を求めているのか。私は日舞の伴奏をしたことはないけれど、ああバレエと同じ!私がいつもしている仕事と同じ!

月の光も大丈夫。この曲は何も考えないでも身体が覚えている。
ラデツキーもニューイヤーで聴いたばかり(笑)
問題は日本民謡の二曲。黒田節には謡がつく。
音源すら聞いたことがないなか、歌に合わせてハッタリで弾いてみる笑。
だけどこれは…アカペラの方がいいのではないか?アカペラ決定!ホッ(笑)

そしてあやめ。どんな曲か想像もつかないので、楽屋で音源に合わせて踊って頂く。
三味線に謳がつく4分くらいの民謡。
これをピアノで再現するのはかなり難しい(本番まで30分切っている)。
私は「今、大体のイメージが掴めたので、踊りに合わせて即興で音楽をつけるのはいかがですか?」と提案。
私は子供の頃から、バレエピアニストになった今も、ずっと人前で即興演奏し続けてきているので、即興に抵抗はない。舞踊手さんは私の提案を快く受け入れてくださり、喜んでくださった。きっと彼女は多くの舞台経験を積まれているプロフェッショナルでいらっしゃる。

私がどんな即興演奏をするか分からないのに、信じてくださること。どんな状況でもベストを尽くそうとすること、それが初対面の方とできることがとても嬉しかった。
そして本番…楽友協会黄金ホールは、(予想に反して)かなり満席近いことになっている!!
私、平服、楽譜もなし、、即興はさておき、月の光、数年ぶりにさっき一度弾いただけで最後まで弾けるのか!?もう、緊張すらできない状況?楽しくてワクワクして!早くステージに行きたい!って!!
このステージに乗ることに躊躇するピアニストなんていないでしょう?

本番で私は、ただただ、感じて味わって、それを音に紡いでいった。即興も月の光も。
ここウィーンの楽友協会でたくさんのお客様を前にピアノを弾けること、
初対面の舞踊手さんとお互いを信じあってコラボできること、
ピアノの、ホールの美し過ぎる響き…
全てがパーフェクトに幸せで、その幸福を音に紡いでいった。

オペラ座のピアニストになった時、オケピでコンチェルトを弾いた時…
ピアニストとしてこれ以上の幸せはあるのだろうか、くらいに思っていたけど、
人生、想像もつかないことが起こるのですね!
私にお話を振ってくれた女性に心から感謝し、
楽友協会デビューの想い出を大事に心に留めておこうと思います。

楽友協会の楽屋にて

 

次回はステージドレスを着て弾きたいね(笑)

楽屋口。
ありがとう。またいつの日か!!!

ひとつのピリオド

昨日、くるみわり人形公演今シーズン千秋楽を無事終えました。
昨シーズンから数えると、全18回、オケピで金平糖を弾きました。
素晴らし過ぎるチャイコフスキーの音楽を、
このオケの中で味わうのはパーフェクトに幸福な時間でした。
リハでもずっと主役のパドドゥ稽古を弾いてきて、
彼らの生みの苦しみ、成長の過程を見てきました。
私自身スランプ気味だった時、あるリハですっかり自信をなくし、
次のリハで涙鼻水垂れ流しながら弾いてた時、
ボスが「Shino, don’t cry…we love you」と
歌詞をつけて私のピアノに合わせて金平糖を歌ってくれたこと、
オケの皆との幸福な時間…
毎公演、どうしてそんなに?と思うほどに、
金平糖を弾き終えたら、オケのメンバーが皆ブラボー言って微笑んでくれて、
なんてあったかいのだろうって。
皆が演奏している横顔や手に見惚れたり、聴き惚れたりもしていたな。
リハでも本番でもたくさんの想い出があって、
きっとこの先、くるみ…特に金平糖の音楽に接するたびに、
あたたかい思いに満たされる気がするのです。
終わってしまうのは寂しいけれど、
何かが終われば、また新しいこととの出逢いとチャレンジが生まれる筈。
道は続いていきます。

昨日は、ささやかなうちあげを。
主役を踊った仲良しのダンサーと、彼のパートナーと3人で、
私たちの大好きな、焼鳥屋「火鶏」へ。

素敵な夜でした。
ちなみに、たびたびテレビ放映された、ウィーン国立バレエ「くるみわり人形」が
Youtubeにアップされていたので、リンクを貼っておきます。
稽古風景ドキュメンタリー
くるみわり人形1幕
くるみわり人形2幕
(ちなみに、私が弾いている金平糖は、2幕の36:00~辺りから)

2013年のクリスマス、そして2014年へ!

歌劇場のクリスマスパーティー

 

歌劇場合唱団が、クリスマスソングメドレーを。

 

去年は、歌劇場オケ金管隊のメドレー演奏だったんですよね。
ウィーンフィルの演奏BGMで昼からお酒飲めるなんて豪華でしょ?

 

昼から豪勢に。ただ、私たちバレエ部は、その日の夜に「くるみわり人形」公演があったので、ほとんど飲めず…残念

 

おうちには、アドヴェントクランツ。アドヴェント期間、毎週日曜日に一本ずつロウソクを灯していき、クリスマスまでの期間を過ごすのです。これは3週目だったので、3本。

 
クリスマスイヴは、25日にくるみ公演を踊る主役お二人の自主練に、少しおつきあいして、三人でカフェでケーキを食べて、

その後、待ち合わせした友人とペーター教会に。
いつも美しい教会が、更に気高く美しく。

 

ヨーロッパに来て良かった、と思う事のひとつは、
静かで清らかなクリスマスが過ごせること。

 

シュテファン寺院を見渡せるバーで、少し乾杯して

 

またまた、別の友人に会い。
ピアノ連弾したり、眠くなるまで音楽について語ったり。
いつも豊かさをくれる友人です。

それまで仕事がたてこんでいたこともあって、
クリスマスイヴの予定は、その日の朝まで特にたてていなかったのに、
空っぽのところには、何かがやってくる。
そんな不思議さと幸福をかみしめた一日になりました。
何よりも、清らかで美しい友人たちへの感謝の気持ちに、胸が満たされました。

 

今日、大晦日は先ほどまでくるみわり人形公演のリハをして、無事仕事納めをし、

夜は「 こうもり」公演そしてジルベスターパーティーへ。楽しみです!!
2013年、どうもありがとうございました!
2014年も全ての方にとって素晴らしいことがたくさんありますように。
良い年をお迎えください。