ロミオとジュリエット

もう一ヶ月も前のことですが、、

デンマークロイヤルバレエ「ロミオとジュリエット」日本公演を観にいきました。

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振付は、ジョン・ノイマイヤー。

私が、初めて観た「ロミジュリ」は、マクミラン版で、アンヘルコレーラ&アレッサンドラフェリによるものでした。

その印象が強すぎて、永いこと、マクミラン版以外は、受けつけなかったのですが…、

最近、初めて生でノイマイヤー作品を観て、今の私にはとてもしっくりくると感じました。

期待に胸をふくらませて観たノイマイヤー版「ロミオとジュリエット」は、素晴らしいものでした。

ジュリエット役のスザンネグリンデルは、登場シーンから観客をグッと惹きつけ、

ほとばしる感情のままに、瑞々しい青春を駆け抜ける様が圧巻でした。

照明も素晴らしく、光と影が効果的に使われており、

まるで、レンブラントの絵画のように、美しい陰影を生み出していました。

光と影・・・

ロミオとジュリエットのような恋の出逢いは、強烈な光ですが、

光が強すぎるがゆえに、深い影が生まれて、

結果、破滅してしまう。

そんな二人の恋を、暗示しているようにも思いました。

一気に燃え上がる恋は、尊く素晴らしいものですが、

いったんねかせて「時」を待ったり、相手やまわりを尊重することができたら、

恋も長く続くのかもしれませんね。

そういえば、昨日友人たちと飲んでいて、寅さんの話になったのです。

寅さんは、自らの恋のことをこう言います。

「道端にキレイな花が咲いていたら、それを摘んでしまいたいと思うのではなく、

自分のものにせず、そのままそっと見ていたい」と。

大人になった今、こういうところに美学が宿っているのだということも、

よく分かるようになりましたね~(笑)

その一方で、ロミオとジュリエットのように、ただ心のままに突き進む恋も、

本当に尊いものだと思いますが。

ジゼル然り、シンデレラ然り、ロミオとジュリエット然り、

素晴らしい芸術に触れるにつけ、

人生は、美しく素晴らしいものだなぁと思わされます。

芸術の本質って、きっとそういうところにあるのでしょうね。

音楽とともに

本日のお仕事♪

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今日は、声楽の伴奏ト音記号
写真は、七人分の楽譜たち。
このように、毎回大量にコピー譜を頂くので、私のピアノ部屋は凄いことに!
整理できません(>_<)
(同業者のお方、整理方法のアドバイスをお願いします!)
声楽伴奏は、ただピアノを弾くことにとどまらず、
言葉ののせかたや声のこと、歌い方、フレーズ感などについて客観的にアドバイスし、
共に音楽を作り上げていく役割があるので、いろんな神経を使います。
さすがに七人分にもなると、終わるとぐったりうーん/ねむい
でも、音楽づくりは楽しく充実した時間♪
頑張ります!

音楽とともに

松山バレエ団「シンデレラ」

先週土曜日、松山バレエ団「シンデレラ」公演にご招待頂き、

神奈川県民ホールに行って参りました。

音楽とともに

森下洋子さんのシンデレラは、高い精神性と愛溢れるもので、

人は、こんなにも尊く強く生きられるのだ、ということを教わりました。

童話の美しい世界だからではなく、そこには筋の通った哲学があったのです。

プログラムノートより抜粋

『シンデレラは、どれ程悲惨な境遇に追いやられようが、決してくじけませんでした。

その汚れた環境を全く逆さの最良の環境に変え、全てに散らばる事柄に慈しみ溢れる愛情を注ぎ、

そこをとてつもない良き香のする美しい場へと変化させてしまいます。

おおよそわが身に降りかかる事柄は、全てこれを天の命として、謹んでお受けするという、その最善を尽くす絶対的純粋態度こそが、真に自分を生かすことになるのだと、シンデレラは父と母と、この世から学んでいたのです。』

その尊い精神に、私の心まで浄化された気がします。

舞台を観にいくということは、その作品の「気」をもらいに行くことなのかもしれませんね。

また、森下さんの信じられないくらい長いアームスは、この上なく優美で優雅で、

シンデレラの生き様を、饒舌に語っていました。

この腕は何かに似ている…しばらく考えたのち、思い当たりました。

天女の羽衣!!!

風をはらませて、ふわりと舞う。何にも逆らわず、万物に調和し、とても自然で繊細な動き。

それでいて、シンデレラの優しさ、魂の美しさ、ブレることのない芯の強さが表れていました。

なんと心地よく、美しい踊りでしょうか。

私は彼女を観ているうちに、不思議な感覚にとらわれました。

存在が透き通って見えたり、発光しているかのように見えるのです。

まるで、この世のものではないもののようで…。

芸術を、更には人生を極めると、次元が違ってしまうのでしょうか?

さて、プロコフィエフの楽曲は、私がバレエ音楽の中で最も愛するもののひとつで、

一時期は、私のiPodの再生回数ベスト25を独占していたものですが(笑)

奇跡とも言える素晴らしさがあります。

ひとつひとつの楽器が豊かに歌い、幾重にも重なり、綾を生み出し、

大きなうねりを持って、運命の輪が回りだす…。

そこには、圧倒的ドラマ性と共に、宇宙にも繋がる真実味や俯瞰性が感じられ。

この日、客席に座っている私も、大きく心が揺さぶられ、

シンデレラの凝縮された人生を共に生きているような、

そんな臨場感を持って、胸に迫ってきました。

また、清水哲太郎さんのサポートは、たとえ震度20の地震がきたって、

洋子さんを守り抜く、という意志と自信に満ちているように見えました。

舞踏会でのパドドゥは、史上最高のバラードに響いてきて、

真実の愛の美しさ、尊さを、教わりました。

これは、お二人のこれまでの道のり、そして年輪によるものなのでしょう。

このシーン、王子とシンデレラのパドドゥというより、清水森下ご夫妻のパドドゥに見えたのです。

それはそれで、とても素敵で。改めて、夫婦って素晴らしいものですね。

松山版シンデレラの、最大の特徴は、なんといってもラストシーンでしょう。

シンデレラは、憧れの王子様にプロポーズされ、結婚の証として冠を頂くのですが、

それを振り払い、継母と義理の姉の元に走るのです。そこには、大きな愛がありました。

そして、姉たちは、シンデレラの頭に冠を載せ、そっと背中を押すのです。。

そう、実はこのラストの楽曲の題名は「Amoroso(愛)」というのですよね。

おとぎ話のシンデレラは、王子様との結婚によって幸せになりましたが、

松山のシンデレラは、男女の愛のみならず、もっと大きな愛にまで話が及んでいました。

その結果、ホール全体が、舞台と天から降り注がれた大きな愛に包まれていました。

そして、私にとってスペシャルなことに、

終演後、森下洋子さんにお会いし、固く握手していただいたのです!

「ピアノ、素晴らしいですね。がんばってくださいね」

一生分の力をもらえたようで、感無量です。

ありがとうございます。

今回の「シンデレラ」公演、そして、森下洋子さんにお目にかかったことは、

今の私にとって、きっと必然のタイミングであり、必然の出来事なのだと思っています。

この素晴らしい機会を与えて頂いたことに、深く感謝し、

シンデレラの精神を持って、力強く歩いていこうと思います。

音楽とともに