あれから10年、ようやくここに。パリシャトレ座。

ウィーン国立バレエ団、一ヶ月のパリ公演、いってきました!一ヶ月という長いツアー、覚悟していったものの、オンもオフも大充実していて、終わってみるとあっという間。一日が24時間では足りなかったし、あと3ヶ月くらいパリ公演が続いてほしかった…。こんな風に思えるのは幸せなことなんですよね、きっと。少しずつ、パリでの記憶を書き残していきたいと思います。

セーヌ川のほとりにある、シャトレ座。

 
こころの音色
ウィーンバレエ公演のポスターは、期間中パリのあらゆるところに貼られていて、

パリでこのポスターを見たことがない人はいない!というほどでした。
メトロの駅も。

 
こころの音色
パリ市を走るバスも半数近くがウィーンバレエ仕様。

 
こころの音色
このバスに乗ってホテルから劇場に通勤する私たちは、

なんだか幼稚園バスに乗っているようで(笑)
シャトレ座は、オペラ座ほどの世界的知名度はなくとも、本当に舞台が好きなパリ市民が通うと言われている劇場。こちら、舞台から見た客席。素敵でしょ?

 
$こころの音色
ヌレエフガラ公演の稽古の合間に。

 
こころの音色
ヌレエフガラはオーケストラ伴奏でなく、録音音源を使っての公演だったので、

私は、客席のてっぺんにあるサウンドエンジニア室で、音のキューだし業務をしていました。キャパといい雰囲気といい、ウィーンのアンデアウィーン劇場に似ているかな。
一ヶ月の公演中ずっと、ヌレエフの写真が劇場に飾られていて。

 
こころの音色
ヌレエフ写真展のようでもありましたよ。
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舞台裏で見つけた、素敵な階段。斜めになっていて、下るのが少し怖い。

 
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実は私、昔からシャトレ座のことを心の片隅に置いて過ごしてきました。

訪れたこともない劇場のことをなぜ?私の小さな…、だけど、大切な記憶を書き残しておこうと思います。遡ること10年ほど前、とある私立財団主催で、日本の若きオペラ歌手、コレペティ(オペラの稽古ピアニスト)をシャトレ座に留学させる、という研修制度がありました。これは大変魅力的な制度だと思ったものの、私自身は応募するに至らず、研修に応募したいという歌手の伴奏者として、たまたまオーディションについていきました。こまばエミナースの舞台だったかな。舞台で数曲演奏し終えて控え室に戻ると、主催者の方が私を探しているという。「なぜ私?」話を聞いてみると、オーディションを聞いていたシャトレ座音楽顧問の方が、私のピアノを気に入ってくださり、パリに来る気があるかどうかを聞いている、というのです!!こんなことってあるのでしょうか。もちろん、もちろん、心が揺れたものの、当時の私にとっては、いろんな状況や思うところがあったのでしょう、結局そのお話には乗らず、東京で仕事する道を選びました。
その時の選択には後悔はしていません。でも、シャトレ座音楽顧問の方がほんの数分の私のピアノを聴いて、声をかけてくださったこと、私が道なき道を歩いていくうえで、どれだけ励まされたでしょう。それ以来、シャトレ座はいつか訪れてみたい劇場として、私の心に在りました。
そして、2013年7月、ようやくたどりつけました。ウィーン国立バレエ団のピアニストとしてね♪
人生って不思議。日々の出来事はただの点に過ぎなくても、歩いていく限り、それが線になって、やがて道ができていく。繋がっていく。広がっていく。回帰もできる。音楽みたい。いろんなことがあるけれど、人生はギフトなのかもしれない、なんて思うのです。
シャトレ座隣にあるセーヌ川の夕焼け。あまりの美しさに言葉がでない。
こころの音色
heavenly…..

ヌレエフガラとシンデレラシューズ

2012/13 シーズン、ウィーン国立歌劇場での最後の公演、
「ヌレエフガラ2013」が終演しました。
【一部】ラシルフィード、白鳥の湖、マイヤリンク、ヴァスラフ
【二部】シルヴィア、ディアナとアクテオン、眠れる森の美女、アポロ
【三部】ライモンダ全三幕
という構成でした。
グランドフィナーレ。
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今年は、私も客席で堪能。
オケピで演奏するのも勿論素敵だけど、プレッシャーなく公演を楽しめるのもとても素敵(笑)
どの演目もそれぞれ味わい深かったのですが、やはり、パリオペラ座からのゲスト、オレリーデュポンとマニュエルルグリ監督の「シルヴィア」は別格でした。
この時間を永遠に切りとりたい、と。
バレエは儚い。いろんな意味で。
だけど、だからこそ、その一瞬がかけがえないものなのだと。
終演後は、恒例の舞台裏でのパーティー。
シーズン終了にあたり、昇格者も発表され、華やかなものになりました。
私は、今回は、ずっとオケの皆さんとテーブルを共にさせて頂きました。
一緒に演奏しているけれど、なかなかゆっくり話す機会がない方々と。
あれですね。やっぱり音楽家はダンサーより飲みますね(笑)
劇場が閉まる夜中1時までずっとみんなで飲んでました。楽しかった!
こちら、いつも朗らかなアメリカ人指揮者のケヴィンと。
ドンキホーテ公演から、まる一ヶ月ご一緒しました。
今度はいつお会いできるかな。
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そして、ボスと。
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1シーズンありがとうございました!!
ウィーンでの2012/13シーズンを終えて、嬉しいような寂しいような。
なんて感慨に浸っている暇もなく、明日からウィーン国立バレエ団はパリに旅立ちます。
パリシャトレ座で7月4日~27日まで、21公演上演してきます。
公式サイトはこちら
パリに仕事で一ヶ月滞在できるのは嬉しいけど、ピアニストも4人中2人(一ヶ月参加するのは私だけ)だし、公演数は多いし、ハードな日々になることが予想されます。。
だけど、この得がたい経験を、思いっきり満喫し、全力を尽くしてこようと思います。
話は変わりますが、最近、初めてジミーチュウの靴を買いました。
キラキラグリッターのシューズ、履くとシンデレラのガラスの靴みたいで、ほんとにきれい。
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靴は芸術品、そう思います。凛としていて美しくて、心が豊かになれるもの。
この靴を初めてはいて、このヌレエフガラに出かけました。
「新しい靴を初めて履く日に素敵な場所にでかけると、その後もずっと、靴が素敵な場所に連れていってくれる」というジンクスを信じているから。私のシンデレラシューズ、これからも素敵なところにたくさん連れていってね!!
もちろん、パリにも持っていきますよ♡

シーズン終盤

早いもので、あと3日で、ウィーン国立歌劇場2012/13シーズンが終わろうとしています。
今シーズン、私はピアノコンチェルトを抱えていたこともあり、
9月~3月までは脇目もふらずに仕事三昧(あ、舞踏会だけは楽しみました!笑)、
コンチェルトが終わってからは、若干抜け殻気味になりつつも、
「ドンキホテーテ」公演のピアニストリーダーになり、
初めてのグランドバレエの通し稽古を弾く機会を頂き、充実した日々を送ってきました。
ドンキの稽古はとにかくエネルギーが要求されるので、音量に自信のない私が張り切った結果、
左手親指の爪がはがれるというアクシデントも…(涙)
が、それもほぼ治り、毎日ドキドキしていた稽古も、回を重ねるごとに慣れてきて、
無事、ウィーンでの今シーズン、ドンキホーテ6公演を終えることができました。
ドンキの稽古中、ちょっとした事件があり、(今思えばそこまで大したことでもないのに)シクシク数時間、数十時間泣き続け、もうバレエピアニストを続けられないかも、と落ち込んだことがありました。が、その時を境に何かが変わったような…。そのヤマを越えたことで、楽に弾けるようになったのです。
プロフェッショナルの仕事人として、自信を持っていなければいけないような年齢ではあるのですが、
私はどうもいつもギリギリで生きているようなところがあります。
たまに、自分のピアノの下手さ加減に嫌気がさして、「どうして生まれてきてしまったのか」などと落ち込むのです。それを、このドンキ公演の主役を踊ったダンサーさんに漏らすと、、「それ、私もよく思う。自分の写真も映像も見るのが嫌」って。。あんなになんでもできて、いつも輝いている彼女ですら、葛藤を抱えつつ頑張っているのかと思うと、驚きつつ、勇気を貰った気がしました。
落ち込んで凹んでいる暇があれば、どうすれば前に進めるかを考えよう。
さて、実は、このドンキホーテ公演。
私が初めてウィーン国立バレエ団を訪れた2011年2月14日、
稽古場で、プレミエ(初演)前の通し稽古が行われていて、私はそれを見せてもらったのです。
衣裳をつけての熱気のこもった稽古、ブルーのジャージを着て全体に目を配る監督。
ピアニストもとても素晴らしく、その全てを昨日のことのように憶えています。
(他の2名のピアニスト氏と共に稽古を見せて頂いたあの時の感じ、忘れられません。
その時、初めてお会いしたのに、もう4人ファミリーみたいな感じで空気が馴染んでいた…。
私はバレエピアニストとしてまだまだなのに、なんだかもう此処が居場所!という予感がしたのです。
今思えば、あの時の直感は正しかった。初めて会った日から今まで、他の3人のピアニストさんは、私にとってファミリー。幸せなことですね)
そんな思い出をもつドンキ公演、2年後には自分が責任者になって同じ場所で通し稽古を弾くなんて、
本当に、人生分からないものです。
さて、ウィーンでの今シーズン最終公演は、ヌレエフガラ。
私の担当は、シルフィード、眠れる森の美女、ライモンダ3幕、シルヴィア。
今年はパリオペラ座からの素晴らしいゲストがシルフィードとシルヴィアを踊りにいらっしゃるので、
その両作品を担当することができて、とても嬉しい!
毎日を、一瞬一瞬を、大切に大切に過ごしていきたいと思います。
今年は、指(爪)を痛めたこともあり、オケピに入らず、本番は客席で見せて頂くことになりました。
このヌレエフガラ、毎年一瞬でチケットが売り切れる超人気公演。
そして、ルグリ監督がここウィーン国立歌劇場で踊る、年に一度だけのステージなのです。
去年は、オケピに入っていて、全く観られなかったので、今年はとても楽しみ!
こちらが、ヌレエフガラの稽古映像です(私もライモンダを弾いています)。
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ヌレエフガラ
それからもうひとつ、先日、日本のNHKで放映された映像、
わがウィーン国立バレエ団、日本人ソリスト、木本全優さんと橋本清香さん夫妻のドキュメンタリーです。
お二人とも、ドンキホーテ公演に主演して、大きな成功をおさめられました。
本当に素晴らしい舞台でした。
日本の誇り、ウィーンの誇り、バレエ界の誇り!
素敵なドキュメンタリーなので、よろしければご覧下さいね。
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NHK ワールドWAVEトゥナイト