ことばの贈り物

誰かの何気ない言葉が、誰かの人生に大きな影響を与える。そういうことがあると思います。先月、リハでうまくピアノが弾けないループにはまり、毎日少しずつ落ち込んでいっていました。コンチェルトを抱えていたのが大きかったかもしれません。ピアノソロに集中するあまり、日々の仕事=バレエ伴奏でつまずいていました。誰かに何か言われたわけではない。でも、踊りと調和できていないという気持ちが溜まっていって。今日こそは!と毎朝思うのだけど、毎日玉砕して。

二年前、シルフィードを弾いていた頃のことを思いだしていました。毎日空回りばかりして、スランプに陥り、普通のことすらできなくなっていたあの時。「私がここで、皆の為にピアノを弾くことがダンサーにとって良いことなのかどうなのか」ネガティブになった時、こう自問自答してしまいます。ダンサーに直接聞くのも微妙だし、、

そんな折、監督が私にメッセージをくれたのです。コンチェルトを弾く本番前、私の部屋に届けにきてくれました。「僕のスーパースターピアニストのシノへ」から始まるお手紙。「大きな大きなハートを持った、素晴らしい芸術家のシノ」…と書かれてあって。彼はどんな気持ちで、私にこの言葉を綴ってくれたのでしょう。たまたまのタイミングだったかもしれません。でも、私を励まそうという気持ちもあったのだと思います。

人の希望や光になるような、大きなエネルギーを人に与えることができる、そんな人だからこそ、世界中の方に彼のバレエが愛されているのでしょう。スランプの時って、自分を見失っている時だと思うのです。不出来な私を信じてくれていたこと、「大丈夫」と自信を与えてもらったことで、また自然に弾けるようになったのです。以前よりもっと楽に!本当に大切なのは、自分を信じることなのかもしれません。もう、ネガティブな自問自答をするのはやめようと思います。人がその人らしく存在することの意義、美しさも教えてもらった気がしています。

また、二年前と違い、私には仲間ができていました。ピアニストの同僚、ダンサー、オペラコレペティの友人、、皆が助けてくれて。
人は一人では生きられない。生かされているのだな、と。人から貰って一番嬉しいプレゼントは、「想い」そのものなのかもしれません。愛のエネルギーはかくも大きな力を与えてくれる。

ここに導かれたことを、神様に感謝したいと思います。

$こころの音色

写真は、最後のコンチェルトを弾いた後、一緒に弾いたオーケストラの方に頂いた花束。ベルベットのような美しさをたたえた薔薇に、愛のエネルギーが溢れている。

心から感謝します。

無心に咲く

今シーズンもバッハピアノ協奏曲を弾いています。
3月に3回弾いているのに、11月、久しぶりの公演で出番直前までお腹が痛くて動悸が激しくて、
私はこんなところで何をしているのか、なぜ生まれてきてしまったのか、と思いつめていました。
だけど、本番ではドキドキもスーッと収まり、無色透明でただただ音楽のなかに存在し、
すべてに調和しているのを感じました。音楽って凄い。
嬉しいとか楽しいとか、そういう自分の感情からも一歩遠のき、
自分の心身を大いなる存在に捧げているような、
もしくは、大いなる存在が私の身体を通して音楽を奏でているような、
少し大げさだけど、例えて言うとそんな感覚でした。
$こころの音色
芸術は、崖っぷちに咲く花だと思います。
それを摘みにゆく勇気のある者だけが見られる景色があり、
伝えられる何かがあるのかもしれません。
今シーズンは既に3回弾き、残すところあと1公演。
12月3日が最終公演です。
「 Tanzperspektiven」
ウィーン国立歌劇場にて7時開演です。
コンチェルトで頂いたお花の一部。
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やっぱり、その存在自体が、神様というか。
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お花を通して、神様が世界の美しさを教えてくれているように思います。
こころの音色
祝福に満ちた、清らかさ。
こころの音色
言葉にするのも儚いほどの。
こころの音色
無心に咲く花に憧れる。

お仕事記録 in Paris

パリで遊んでいる写真ばかりアップしていて、
一体何しに行ったのか、仕事の記憶が薄れている気がしないでもないので、

お仕事記録も残しておきたいと思います。

ドンキホーテの舞台稽古
こころの音色
アップライトピアノでドンキを弾くのは正直大変!!腕や背中が痛くて、トレーナーさんにマッサージをお願いしていました…。
オーケストラ練習のたちあい。ドンキの楽譜は、手書き。
こころの音色
舞台稽古
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舞台でのトレーニングクラス。

 

こころの音色

一ヶ月の期間中、二回の公開稽古が催されたのですが、
監督が指名してくれて、両日とも弾かせて頂きました。
私にとってシャトレ座は少し特別な意味合いを持つ劇場だったので、そのシャトレ座でこうして仕事ができ、パリのお客様と分かち合うことができたこと、嬉しく思います。
 
 

ガラ公演の舞台稽古。舞台監督席で音出し。
私がこんなところにいるのが似合わな過ぎて、ダンサーに写真を撮られる(笑)

 
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舞台裏にいられる、しあわせ。

 
こころの音色

ドンキホーテの最終舞台稽古を終えた記念に。

 
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仲良しのプリスカと。

 
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未知なる可能性に溢れる18歳!

 
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同僚ピアニストと公演を観ます。開演前に客席にて。

 
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パリ公演を振って頂いたマエストロと。

 
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フランスの若きオケ、暴走するところもあったけれど、
一音も気を抜かない!楽しむ!という若さがとても魅力的でした。
1ヶ月21公演、全公演終演後、
関係者のクラブと化したシャトレ座ホワイエ。

 
$こころの音色
朝方まで踊り明かしました!!
今回、パリで仕事をしてきて思ったのは、
その国、その街の文化、社会、空気、人、、
それらが個性をもって生きているということ。
それは、日本でもウィーンもパリでもそう。
だからこそ、違う街で働く=生きることは、とても大きな経験であり。
ウィーンと同じプロジェクトを同じメンバーで上演しても、全然違う。
パリなりのやり方があり、お客様の反応があり、街との融合があり、
そして、本拠地で公演するのとは違う迎えられ方や魅せ方があり。
パリは文化が深く、成熟しているので、余計にパリならではの色を感じました。
フランスのオルガニゼーションが適当過ぎて、やりにくい部分も多々あったけれど(笑)
今回、全公演に同伴して、カンパニーピアニストとして責任ある仕事を任せて頂いたことも大きかった。
仕事以外でも、一ヶ月の旅公演中、仲間とも監督とも深夜まで飲み語ったり、パリの街にくりだしたり。
ウィーンに戻ってきたらそんなこと全然しないので、
あの日々は幻?と思ったりもするけど、やっぱり全部残っていくんですよね。
ずっと続いていくものなんてない。一瞬一瞬流れていく。
そのなかで、こんな貴重な経験をさせてもらって、素敵な糧と思い出を頂いたことに感謝です。
ありがとう!パリ!!
またいつの日か!!!